空飛ぶファンファーレ
「先生。今回の話バトルの背景がとてもリアルで、技を繰り出した時の姿勢やアングルがかっこいいと好評でした!」
「だろう?今回は取材で良い絵が取れたからね。それを作品に落とし込んだんだ」
「空中での体勢がアクロバティックでしたね!あれ?でも先生が書いた建物のモデルは○○地区にあるんでしょう?ドローンとかラジコンって先生使えましたっけ?よく撮影の許可が下りましたね?」
「…取材に協力してくれた人がいてね」
「そうなんですか!」
この編集者は仕事熱心だが、自分の疑問に思ったことを延々と追及してくるところが面倒くさい。
喫茶店で熱いコーヒーをグビグビ飲む彼は、僕の眉間の皴に気づかず、感心したように頷いている。
「その方は先生のファンなんですか?」
「あぁ」
本当は康一君に取材の協力をお願いしていたのだが、プッツン由花子とのデートが急遽できたと言われてしまい、仕方なく他の友人に頼んだのだ。
(まぁ紹介された奴は想像以上にいい仕事をしたし、礼くらいしておこうか)
「今度お礼をしようと考えているんだが、何か良い案があるか?」
「う〜ん…やっぱりサインですかね?」
「そうかい?」
「僕、先生から頂いたサインずっと神棚に飾って拝んでます!取材に協力してくれたんですから、きっとその人も喜んでくれますよ!」
(愚直で面白みが無いが、シンプルな返礼の方がいいか)
「参考にしとくよ」
「ありがとうございます!!」
「さて、次の取材の予定だが…」
翌週の水曜。
友人の辻渚沙と、取材の資料作成に協力してくれた羽間満夜が僕の自宅を訪問してきた。
「露伴さんこんにちはー!満夜連れてきましたぁ!」
「はじめまして。羽間満夜です。今日はよろしくお願いします」
「あぁ、よく来たね。岸辺露伴だ。君の話は渚沙からよく聞いているよ。こちらこそよろしく」
「はい」
「さー入って入って!」
一人勝手を知ってるように中に行く渚沙。
「おいおい、僕の家なんだぞ…まったく」
「渚沙がすいません…」
「いや、今日は君がいるからかな、テンションが高い。嬉しいんだろう。さぁ中に入って」
「お邪魔します」
それに比べ、礼儀正しく僕の後をついてくる彼女は大人しい。
(こういう奴が豹変すると面白いんだよな)
またどんな経験をして来たのか。記憶が読みたい。
そんな邪念を感じたのか渚沙が振り向いた。
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