プロローグ

「お姉ちゃんだいじょうぶ?」
「…ふぇ?何が?」



肩を揺さぶられた私は、覚醒しきっていない頭から思ったことをポンと言葉に出した。

何時間寝ていたんだろう。
声の主を見る。小さい女の子だ。
見下ろす瞳には純粋に相手を心配する気持ちが映されているように思え、私は身体を起こした。

「…のどかだ」

コンクリート製のビルも、電信柱も無い。
土がむき出しのただの道。
見回す景色には、煙突から煙を出す何件かの洋風の家と畑しかなかった。
作業している人は、皆外国人に見える。

「ここ、どこ?」
「ハージ村。恵外界にある最果ての村だよ」
「け、い…?」
「お姉ちゃんどこから来たの?こんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ?」
「あ、うん」
「おうち、分かる?」

家。家とは、人間が居住する固定式あるいは移動式の建物のことである。

寝て、起きて、in the 海外。
そして分からない地名。
分かったのはただひとつ。


「わ、分かんない。どうしよう…」


自分の家がここに無いということだけだった。
私の返事を聞いて少女は。


「孤児?」
「いやもう児童って年でも無いけど。でも、うん。独りだね」
「じゃあシスター呼んでくる!」
「足速っ!?」


小さい手足を動かして坂を駆け上がっていった。
追いかけようと思ったが、寝起きの怖い顔で子供の後を着いていくのは事案が発生しそうだ。
私は浮きかけていた腰を下ろし、周囲を観察した。
動いている人々は、日々の糧を収穫するために汗水を垂らしている。

「いい天気だぁ〜…」

遠くを見つめているうちに睡魔が蘇る。
私はそのまま、また道端で眠ってしまった。
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