小さい恩人達
何かが擦れる音。揺れる視界。そして頬に触れる何かを感じて、私は目を覚ました。
「ん…?」
「起きましたかお姉さん!!」
「え?」
「お姉ちゃんお迎えに来たよ!」
「あ、あぁ…さっきの…」
自分を背負って移動している少年と、幼女がまぶしい笑顔で笑いかけてくれる。
仕事で疲れた心と体が癒される。爪先が地面に着いて革靴がガリガリと擦れていたが。
「ていうか、お迎え?」
「シスターに聞いたの!そしたら、家無いなら教会に住んでいいよって!だからお迎え!」
「え?教会?」
(日本にもあるけど、ここにいる人皆顔つき外国人だもんな…ってそういえば)
「あ、ごめんね君。重いから降ろしていいよ?」
「アスタっす!確かに大人は重いけど、お姉さん背中怪我してるし安静にしててください!」
「あ、ありがとう」
(アスタ…!?)
聞き覚えがある名前に彼女は目を見開いた。
愛読書である漫画の中の登場人物と同じ名前。特徴も一致している。
ということは、ここは本当にクローバー王国の恵外界のどこかなのか?
仮説を特定するために、とりあえず教会へと連れて行ってもらうことにした。
「大きい骨だね〜」
「すげぇ昔に現れた魔神の骨なんです!それを一人の魔導師が倒して、それが代々魔法帝って呼ばれてます!」
「へぇ〜、そうなんだ」
「記憶喪失ってやつですか?みんな知ってることなのに、へぇ〜って」
「うーん…。自分の名前と年齢?くらいしか覚えてないや。背中の怪我もいつ負ったのか覚えてないし」
結局アスタに背負われたまま、彼の住んでいるハージ村の教会に連れて来てもらった。
最初に見つけてくれた5歳の女の子・アルルは先に歩いて手招いている。
その隣には、修道服に身を包んだ女性が立っていた。
「シスター!」
「お疲れ様ですアスタ。はじめまして、貴女も大変な目に会いましたね?」
「はじめまして、アマチシノブです。いやぁ…あまり実感がなくて」
アスタの背中から降ろされ教会に入る。
中では身寄りのない孤児達が家事を手伝っていた。
何もない掌から水を出したり、薪に火を着けたりしている。
「え、何それすげぇ。魔法みたい」
「何言ってんだよ。魔法に決まってんじゃん」
「…マジで!!?」
実際に見てみると誌面で見るより感動するもの。
私は思わず、指から種火を出していた少年の手を握った。
「すごいね!熱くないの?」
「お、俺は大丈夫だけど…って危ないから離せよ!」
「ナッシュ照れてる〜」
「ちっ!違う!」
「ごめんごめん。心配してくれてありがとう、ナッシュ君」
「うっ!…うん」
少年の手を離すと、周りにいた他の子供たちが群がり話しかけて来た。
「わたし、レッカって言います!こっちは最年少のホロです!」
「自己紹介ありがとうレッカちゃん。ホロ…君?私はアマチシノブです。シノブって呼んでくれると嬉しいな。二人は何歳?」
「私は13で、ホロは3歳です」
頑張って指を3つ立てたホロの可愛さに悶える。
「かわいい!よろしくねホロ君」
「あい」
「うわぁ……癒される。何か浄化されている感が!」
「アマチさんはどこから来たの?」
「分かんない。私のいた場所では無いと思うんだけど」
「そういえば魔法知らなかったね」
「外の国から来たのかな?」
「じゃあ、観光ってことにしよう。これでふらふらしてても大丈夫!」
「いやどこが」
ナッシュのごもっともな鋭いツッコミで笑いが起きた。