ため息の成分
「やぁ名前、今日はスージーQと一緒じゃないんだな」
「えぇ、まぁ。あの…それじゃあ」
「え。あ、あぁ…」
背を向け私が立ち去ろうとすれば、小さくため息が聞こえる。
まただ。
彼は私と会話する時、もしくはした後にため息をする。
いつ気づいたかは覚えていない。けれど、ここのところずっと。
耳をすませば必ずと言っていいほど、確かに彼はため息をする。
「修行が上手くいってないのかな…」
この前ジョセフに修行内容を聞いた時は
「リサリサから褒められたぜ〜」
とか言ってたから大丈夫だと思うんだけど。
私も波紋戦士だが生まれつき体が弱いせいか出来が悪いし、リサリサ先生とのマンツーマンレッスンが終わると後はスージーQと買い出しに行ったりして他の二人が何をしているか知らないのだ。
「そぉんなに気になるならシーザー本人に聞けよなあ〜」
「…だって」
「あ、スイマセン。泣かないで。俺殺されちゃうから」
「う、ん」
あの後ジョセフはからかってこなかったけど…分かってる。
柄じゃない。
ガサツだしおしゃれもしない。スージーQのように明るくなければリサリサ先生のように強くもなく…波紋戦士としても女としても中途半端。
「それはため息つきたくなるよなぁ…」
彼の口から多くの愛の言葉が、道行く女性に吐き出されるというのに。
私が相手だと、シーザーはため息を吐く。
その時口から出ているのは、愛の言葉の代わりに二酸化炭素と彼が堪えた負の感情だろう。
「足手まといだもんな…」
声が震える。
いい迷惑だろう。こんな根暗に想いを寄せられて。
今なら世界中の不幸が相手でも不幸自慢、負けない気がする。
「あーあ〜…」
なんで私だけ、と自らも深いため息を吐き近くのベンチに腰を下ろすと空を眺めた。
──しばらく無心で空を眺めていたようで、いつの間にか夕方になっていた。
何度か話しかけられた気がするが、気のせいだろう。寝てたのかな?
…帰るのが憂鬱だ。最近食事の時間すらため息つかれるし。
どうすればいいんだ。
「こんなに好きなのに」
「…誰をだ?」
「!?」
振り向くと、斜め後ろの階段に腰かけたシーザーがいた。
「な、なんっ!?」
「名前」
(うわ近寄ってきた!隙だらけだって怒られる!?)
何か言われる前に急いで立つと謝る。
「ご、ごめんなさい!迎えに来てくれて…ね、寝てたの!今帰る!」
「そうか。…なぁ」
「手煩わせてごめんなさい!」
なんか今までのシーザーと雰囲気が違うのを感じ取り、急いでまた謝る。
「気にしていない。今日名前は休みだろう?それより聞いてくれ」
「城に戻ったらじゃ」
「今すぐ。今すぐがいいんだ。なぁ、名前。なんで」
「やめて!!」
説教なら聞くよ、気持ち悪いならこの想いも隠すし、もっと修行も頑張るから…。
「き、今日はやめて…お願い」
「…」
これ以上側にいると、想いを伝えたくなってしまうから。
「分かった。…帰ろう」
「うん…」
城に戻った後も食事が終わった後も、明日の予定を伝えられても。
彼とは一度も目を合わせないまま1日が終わった。
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