Short Short

クリックでSSが出たり隠れたりします。

クラン・ドゥイユ(剣太郎・片想い)

視線の先にいる彼女は今日もとても綺麗に宙を舞う。ぼんやりとしているボクの頭を首藤さんが笑いながら叩いていく。
「見惚れてないで練習真面目に参加しろよ、部長」
「ご、ゴメン!」
何を見ていたのかバレているのが分かって、慌てて皆に向き直ると全員がニヤニヤとボクを見ていて、顔に熱が集まっていく。どうして、なんで皆にバレているんだ。いたたまれなくなって、部室に行ってきます、と全速力で駆け出す。走りながらちらりとグラウンドを見れば彼女は居なくなっていて、何となく残念に思う。彼女が見たくて皆から離れた訳では無いけど、無いけども。肩を落として部室では無く外水道に向かえば、既に先客がおり、水を飲んでいたらしいその人が髪をかきあげる。その横顔を見て思わず息を飲む。
「あれ?葵くんだ」
ボクに気付いてお疲れ様ーと笑うのはさっきまで見つめてた人物その人で、どもりながらも返事を返せば彼女は笑顔でボクの方へとやってくる。
「練習大変そうだね、テニス部」
「え?う、うん!陸上部も、大変そうだよね」
「うーん、私はイマイチ伸び悩んでるんだけどね……」
「そんな事ない!さっきも、バーを跳ぶ姿、凄くキレイだったよ!」
声を大にしてそう言えば、キョトン顔の彼女。今、とても恥ずかしい事を言ったんじゃないだろうか。そう顔を逸らして戸惑っていれば、彼女が小さく、ありがとう、と言ったのが聞こえて顔を上げる。不意に口元に何かが触れた。
「コレ、あげる!頑張れるおまじない!」
へへっと笑う彼女が見えて、自分の口元に押し付けられたものが飴だと気付いたのは彼女が立ち去った後で。
「……酸っぱいなぁ……」
一人残されたその場所で、貰った飴を口に入れれば檸檬の酸っぱさが広がった。



[ << | >> ]

Text