Short Short
クリックでSSが出たり隠れたりします。アプラウズ(天根・悲恋)
「……悪い。今は、そういうのは、考えられなくて」
申し訳無さそうにそう零して逸らされた視線に、少し言葉に詰まってから、そうだよね、と返すのでいっぱいいっぱいで、その後の事はよく覚えていない。気付いた時にはいつの間にか彼とよく行った海辺に来ていて、無意識に彼との思い出の場所に足を運ぶ自分が滑稽に思えて小さく笑う。何処を見ても彼はいなくて、ああそっか振られたんだ、と改めて理解する。
クラスメートの天根くんとは仲が良いと思っていた。それこそクラスメート達が『お似合いだ』と言う程には友情以上の関係を築けていると思っていたし、自他共に認める公認カップルなんだと思っていたのに。
「私だけ、だったんだなぁ……」
最初から片想いだったのだ。天根くんにとって私はずっと、『仲の良いクラスメート』だったのだ。周りが何と言おうと流される事無く、彼は私を一人の友人として見てくれていたのに、私は周りの言葉だけで彼の気持ちまでも自身と同じだと錯覚してしまっていたのだ。もう今までのように、彼のダジャレにツッコんで笑って、隣に立つことが当たり前の日々は無いような気がした。どんな時でも真っ直ぐと人と話す天根くんが、告白してから私と一度も目を合わせてくれなかったから。
「バカだなぁ、バカだなぁ私……」
彼の前で流さなかった涙がぼろぼろと零れ落ちる。終わりを急いでしまった恋は、自分の浅はかさを思い知らせて幸せだった日を打ち砕いていった。