オタクの備忘録



※芸能人×芸能人の芸能パロ



跡部景吾と日吉若。どちらも今をときめく人気俳優である。

跡部景吾。
華やかな顔立ちにすらりとした体躯。
気品あふれる佇まいと腰に響く低音ボイス。
一目見ただけで心を奪われ、その内面を知ればさらに心惹かれること間違いなし。
バラエティにおいても、その機転の利きようと細やかな配慮、共演者との心地よいテンポで繰り広げられるトークに、さらにファン層が拡大するきっかけとなっている。
お茶の間の視聴率を根こそぎかっさらうことでお馴染みの、押しも押されぬ名俳優である。

日吉若。
すっきりとした顔立ちに涼やかな目元。
醸し出される怜悧さと、時折見せる笑顔に魅せられ、沼に落とされるものが続出である。
主に舞台での活躍が多く、平日公演であっても毎度のこと満員御礼で締めくくられている。
テレビドラマへの露出も増えてきているが、その演技力の高さゆえ、どんな役柄もこなしてしまえる器用さからカメレオン俳優の名を恣にし、スタッフロールが流れるたびにその衝撃でトレンド入りしている新進気鋭の俳優である。

さて、そんな二人だが、一部のファンの間ではとある疑問の声が度々上がるのである。
それは「跡部景吾と日吉若は本当は付き合っているのではないか」ということ。
では、ファンにそう言わしめる二人のエピソードを少し掘り出していこう。


@お揃い

まず日吉に関して、プライベートではアクセサリーの類をほとんど身に着けないことで知られている。楽屋カメラや舞台挨拶、その他バクステ映像などにおいても指輪やネックレス、時計でさえも身に着けている姿は見受けられない。
だというのに、だ。
ある日同業者のSNSにてネックレスを身に着けた日吉の写真があがったために界隈は震えた。派手すぎないけれどワンポイントとしてしっかりと機能を果たしていて、普通にセンスが良い。さらに特定班によれば件のネックレスは色違いのペアネックレスとして需要が高いものらしい。しかも普通に良いお値段である。
となれば脳裏に浮かぶ文字列に、ただただため息を吐くことしか出来ないでいるとそれを見計らったかのようなタイミングで飛び込んできた新たなツイート。
『これ、ペアの相手べーさまでは?』
二枚の画像が並べて貼られていて、一つ目はもちろんSNSにあがっていた日吉の画像。もう一つはこれまたどこかの打ち上げの画像と思われる、グラスを手に持ち笑っている跡部の画像。
そしてその胸元には渦中のものと全く同じ型と思われるネックレスが鎮座している。
色はシルバーで、日吉のブラックのものと丁度対になっているペアネックレスである。つまりなんだ、こう、全くのプライベート用でお揃いのネックレスを買ったのか…そうか…。
見せつけられてしまったな、と満足げに息を吐いてスマホを落とし、その日はぐっすり快眠だったのだがこれはまだまだ序章に過ぎなかったのである。


Aかわいい

こちらの出どころはとある人気少女漫画を実写ドラマ化のツイッターにて。
話の筋としては、跡部演じる完全無欠のエリート上司の秘密をひょんなことから知ってしまったアラサーOLヒロインとのラブコメ、という王道展開である。ちなみに日吉はそんなヒロインの同期という役どころを演じていた。
実は公式アカウントさんが、割と高頻度で主演者同士の画像であったり動画であったりを上げていてくれていたので、もしやこの二人の何かしらがあるのではないかと誰もが期待を抱いていたことを前置きしよう。
そして事件は起こる。
ある日、ポンとツイートされた内容は「お疲れモードだったようです」の一文のみ。そして添付されている動画は少し長めだった。
再生すればカメラがくるっとUターンして、映し出された先には長椅子。そしてそこに腰かけながら、肩を触れ合わせて互いに寄りかかるように寝ている跡部と日吉の姿が。
誰もが一旦呼吸を整えてリツイートとハートのボタンを押した。感情が荒ぶりすぎてハートボタンをついつい連打しては外してしまう葛藤とも戦いながらであった。ついでに密林さんで原作全巻ポチった。
深呼吸をしてから再度動画を再生する。
緩く前側に手を放っている跡部と、腕を組んで小さく肩が上下に動く日吉。
しばらくはその状態のまま動画の時間が進んで、かと思えば日吉の体が少し大きく揺れ動いて跡部の膝元にストンと頭が落ちていった。
なんという奇跡。その衝撃で目が覚めたのか、そして自分の状況にめちゃくちゃ混乱したのか。慌てて体を起こした勢いで跡部の顎のあたりに元気よくぶつかり、その衝撃で目を覚ました跡部と一緒に片方は顎を、もう片方は額のあたりを抑える姿が、スタッフさんの笑い声とともに映されていた。
かわいい以外の感情を失ったことはもちろん言うまでもないだろう。めちゃんこかわいい。


Bきっかけ

日吉が初めてバラエティーに出たときの話である。主演映画の番宣のためにお呼ばれしたのだが、一人での出演だったのでなかなかに心臓に悪かったのも思い出した。
結果、トーク自体も卒なくこなすことが判明し推し度合いが増した。いい話である。
そんな番組の中で、日吉自身をもっと深く知っていこう、というコーナー趣旨で芸能界に入ったきっかけについて話を振る場面があった。
「舞台を見に行ったのがきっかけですね。実は実家が古武術の道場でして…、それを舞台演出に取り入れたい、とかで師範の父が特別講師として招かれたことがあったんですね。…ええ、そうです、…それで、ゲネプロにお呼ばれしまして、夏休み中で暇だった自分が父と一緒についていくことにしたんですよ、まあ当時舞台というか演劇についても『ロミオとジュリエット』ぐらいしか知らなかったんですけどね。…それでいざ舞台の幕が上がって、主演の方が一番に出てこられて、そしたらもう虜になってたんですよ。…あの時の衝撃は忘れられませんね、もうその人しか見えないんですよ。動作の一つ一つが綺麗で心惹かれて、瞬きするのも惜しくなるぐらい舞台にかぶりついてました。作品自体もすごく面白くて…、父が演出に関わったシーンが来たらとっても興奮して…。終わったあと父に『俺もああなりたい』って言って…、で、いろんな方とのご縁に恵まれて、ここまで来れた、みたいな感じですね。」
と、かなり熱く語ってくれた。
雛壇の方に「その主演の人って誰だったの?」とすかさず質問を投げられれば、少し照れたような顔で笑いをこぼしながら「跡部景吾さんですね」と返答していた。これは普通に尊い話である。


C名前呼び

これは跡部のラジオに日吉がゲストとして招かれた時のエピソードである。互いの呼び方は「日吉」「跡部さん」で基本的には固定されている。…のだが。
エンディングトークの際に最近の近況を語り合う、という流れになった際に跡部に話を返そうとした日吉が「景吾さんスマブラ始めたんでしたっけ」と言葉を重ねその場が一瞬沈黙。
バックの音楽がやたらと陽気に流れたと思えば、跡部がマイクから離れた遠くでガチ笑いをしているのが乗っかり、続けざまに日吉の「違う…違うんだ…違うんです……」という絶望感に満ち溢れた声が流れた。
青い鳥なSNS上ではハッシュタグをつけることを諦めたオタクの限界呟きがTLを埋め、事情を知らないフォロワーに大層な恐怖感を味わわせたらしい。
その後、なんとか笑いの波が収まった跡部が、それでも弾んだ声色で「また対戦するか、若」と話を続けもはやオーバーキル。日吉が編集点をつくるために別の話題に切り替えようとするも、構成作家の「面白いから流すよ」の一言で絶句するところまでしっかりと届けられた。
さらにその次の週では「プライベートと仕事で呼び名を変えることで、メリハリをつけたいらしい」との跡部からの補足が入り、二週続けてリスナーが限界状態に陥った。和やかに30分お話したからプライベート感が出たのね…そうなのね…ありがとうございます…。


Dそういうことなの

跡部のインスタは更新頻度がとても高い。空がきれいだったとか、美味しそうなお昼ご飯の話だとか、同業者との何気ない写真だとか。楽し気な日常生活の切り抜き、といった感じで毎日楽しく追いかけている。
そしてある日、夕飯時にインスタが更新された。
「免許取ったらしいので」
黒のハイネックを着た日吉が運転席に、ワインレッドのニットを合わせた跡部が助手席に座った状態でにこやかな笑みを浮かべながら写真に写っている。胸元に輝くのはいつぞや話題になったペアネックレスで。
次の写真には砂浜を歩いてく日吉の後ろ姿が写っていた。太ももまでの黒コートに、またもや真っ黒なスキニーを合わせたスタイルゆえに全身真っ黒なのだが、それが逆に光を静かに反射するさらさらの茶髪を際立たせているように思える。顔は少し海の方を向いていて、前髪からわずかに覗く目元はどこか憂いを帯びていて幻想的だ。
最後の写真は砂浜を向こう側から歩いてくる跡部の姿が写っていた。上にはグレーのPコートを羽織っていて、下はネイビーのパンツというシンプルな装いだ。手はパンツのポケットにしまわれていて、平素キラキラと光を放つ青の瞳は伏せられ、口元が緩く弧を描いている。中々見ることのないとても穏やかな表情で、それが非日常的な印象を与えた。
どこにも何も書いていないけれど、きっとこの写真のカメラマンはお互いだ。
これが普段、跡部の見ている「日吉」の姿で、日吉の見ている「跡部さん」の姿なんだろう。
そのことがどうしようもなくオタクを泣かせるし、そしてこの上なく幸せな気持ちにさせてくれるのだ。そんな思いを到底書き起こせるわけもなく、静かにハートマークを送ったのだ。



…とまあ、そろそろ眠いのでひとまずはこのあたりで区切ろうと思…う…、って、おっと?ピコンと小さく響いた通知音に目を通せば、日吉と跡部、双方の公式ツイッターによる新しいツイートがステータスバーに現れていた。
『こんばんは、日吉です。情報解禁です。四月からの新番組において主演を務めさせていただくことになりました。W主演という形で、跡部景吾さんとの共演となります。よろしくお願いします。詳細はまた後日。それではおやすみなさい。』
『皆さんこんばんは。本日情報解禁となりましたので告知させていただきます。四月からの新番組で主演を務めさせていただくこととなりました。日吉若さんとW主演という形になります。かなり気合の入った作品となっているので、どうぞお楽しみに!それではよい夢を〜』
三回読み直したのにどうしても四文目で目が滑るので全く頭に入ってこない。とりあえず分かったのは、今日は寝れないな、ってことかな。
人が慌てているのを見ていると落ち着くというのは本当のことらしい。さきほどからオタ友からの鳴りやまないLINEの通知を見ていると、自分自身はまるで動揺なんて一ミリもしていないような心地になれる。……よし、円盤でも見るか!!…立ち上がりかけた瞬間に平地にもかかわらずずっこけたので、やっぱり動揺はしてますね。