プロローグ

新学期。真新しい制服に身を包んだ生徒が沢山下校していた。今年で自分も先輩と呼ばれる位置に立つことになる。そのことが、少しだけ楽しみだった。
案の事俺の所属する部活にも1年生が入部希望で来ていた。怪我で他のレギュラー陣においていかれた分、早く顔合わせができてよかった。たくさんいる中でも目立っているやつはチビ、越前リョーマ。すでに噂が立っていて荒井雅史や他2年を蹴散らした、少し見どころがありそうなやつ。俺の怪我も見破って、明らかに他の新入部員とは格が違う。目の前にラケットを片手に持つ越前の生意気そうな目線が妹と似ていて、笑えてくる。
『兄貴、自分は兄貴に絶対に勝つから!』
そんなことを思い出してしまう。

「先輩?」
「……おっと、すまねえな。考え事してたぜ!」

今は目の前の試合に集中、とは言えども。一度妹のことを考えると頭から離れないものだ。去年、父の単身赴任についていった俺は部活もあり、約1年ほど妹に会えていない状態だ。母はよく東京にやってきたが、妹はテニススクールと学校があったため来る機会がなかなかできなかった。昨日、地方のテニスジュニア大会を終えて飛行機で東京にやってきた妹は疲れたのか8時には就寝していた。部活後、自転車で帰ってきている俺とは顔を合わせることがなかった。本当はそんな年度末の地方大会なんて出場しなくても良かったのに、兄である俺が優勝したから無理言って出たらしい。ちなみに妹の結果は優勝だ。小さい頃からテニスで競ってきて、いつも俺が勝っていた。そんなことを繰り返していると、いつの間にか彼女は俺に対する敵対心? を抱いたらしくお兄ちゃんという呼び方から兄貴と変化し、下剋上という言葉を覚えた。少し寂しさを感じる反面、俺を目標にしてくれることは嬉しい。ただ、ぐんぐんとテニスの腕があがっていく妹にちょっとした恐怖を覚えていた。越前のテニスの腕とその帽子を被った姿が妹と重なった。青学とは違って今日が入学式のはずだ。入学祝いになにか買っていってやろう。

「よそ見してていーんすか?」
「……っ!」

越前の打球にこれ以上思考を妹に持っていくことはできなさそうだ。

入学おめでとう、雅美。兄ちゃん、お前が俺に勝つ日を楽しみにしてるぜ。

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