黒尾と烏野

「うおおお!? じょっ……じょっ……! 女子が2人になっとる……! キレイ系とカワイイ系……!」
「虎よ、これが烏野の本気なのです」
「ま、眩しい……!」

烏野の連中を海と一緒に迎えに行き案内していると、案の定というか通常運転の山本が叫んでいた。目の前にいる烏野のマネージャー達−−特に新入りの子が引いているのでやめてほしい。恥ずかしい。

「どうかしたか? 山本くん」
「……! ににににに仁王さんんん?! は、はう……!」

山本の声に駆けつけたのか仁王がこちらにやってきた。そうだ、仁王を烏野に紹介しなければ。他はもう紹介したのであとは烏野だけだ。
俺が口を開こうと思ったとき、ちょうどあの二人が騒ぎ始めた。

「ぎゃ、ぎゃぎゃギャル系美人?! え、音駒にマネ……どういうことだよ虎?!」
「はっ、そうだった! 見よ龍! 音駒にも、音駒にも、花がやってきた……!」
「ギャル系美人……うっ……!」
「……おまんら大丈夫か」

一通り騒いだ二人を冷ややかな目で見つめた後、仁王に目を向ければ呆れた顔で突っ立っていた。他の烏野の奴らはマネージャーが入ったのが意外なのか、はたまた彼女の容姿に惹かれているのか、目線は彼女に向けていた。後者は早めに俺に相談してほしい。

「マネージャー入ったのか」
「ああ、臨時だけどな。仁王!」
「ん? なんじゃ、鉄朗」

仁王を紹介しようと、彼女を呼んだんだが……。だめだ。紹介どころじゃない。
俺の勘違いじゃなかったみたいだ。昨日、帰りに呼ばれた"鉄朗"。ずっと幻聴だと思っていたが本当だったらしい。どうしようか。紹介させるどころじゃない。顔が火照ってしまいそうだ。名前を呼ばれるということはそんなに嬉しくむず痒いものだっただろうか。今、俺の顔を見てほしくない。
俺の心は露知らず。彼女はもう目の前にいて不思議そうな顔をしている。

「あ……あー、烏野高校が到着したから自己紹介……」
「ああ、そうじゃったな。マネージャーの仁王じゃ。スコア記録とかは自信がないが、雑用は任せてくれ。よろしく」
「主将の澤村だ。よろしく」

主将にならって他の部員も自己紹介をしていく。途中で田中とリベロの西ノ谷が言葉に詰まってうまく話せないという事態が発生したが何も問題なく終わった。
その後、澤村に体育館に来るように告げ仁王と共に戻ろうと彼女の方を向けば、烏野のマネージャー達と仲睦まじく話していて安心した。彼女はその一際目立つ容姿のせいで一部の生徒からありもしない噂を立てられたりと、友人関係で問題ありだ。それに対して否定も肯定もせず、言われるがままにしているため本人は気にしていないのだろうけど、俺からすると少し不安だった。やっぱり、好きな女の子の悪口陰口は聞いて気持ちよくない。いや、大分オブラートに包みすぎた。きっとその場で何かが起こってしまうから、悪口はできるだけ防ぎたい。

「じゃあまた体育館で」
「うん、じゃあね」
「ま、まままた、あとで!!」

こちらに向かってくる彼女の顔は優しそうに頬が緩んでいた。その姿がとても可愛らしくて、あの笑顔に勝るものはないが、この表情も好きだ。

「なんじゃ、待ってたんか。海は先に行ったか?」
「ああ。……お前は仲良くなったみてえだな」
「どのマネちゃんもいい子じゃ」
「そうか。そりゃ良かった」

なんじゃ、おまんはうちの保護者か。そうやって笑う彼女は俺の心情なんか気がついていないんだろう。いや、もしかしたらわかっている小悪魔かもしれない。それも彼女らしいような気がする。

「そういえば、孤爪くんの言っとった子は来とらんのか?」
「あぁ……補習で遅れるってよ」
「大変じゃのう……」

仁王は頭が普通に良かったか。たしか、今まで赤点を取ったことはないと言っていた。それ以外に彼女の口から勉強面を聞いたことはないが、上から数えたほうが早い順位だったはずだ。補習なんて縁がないんだろう。
大学はどこに行くんだろうか。都内だったら自分の希望とも被るけど、地方だったら会えなくなるかもしれない。まず、彼女は何を目標に大学に行くのだろう。そんな話一度も聞いたことなかった。部員達よりも仁王雅美について知ってるからって少し得意げになっていたが、彼女のことをほんの少ししか知らなかった。ちょっと悲しい。

「……鉄朗?」
「……あ? あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫」
「そうか」

そんなことこれから知っていけばいい、そう思ってまた体育館に足を進めた。





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