第11話 『私の居場所』




カストルさんともラブさんともテイトとも教会のみんなとは仲良しになった。
あ、フラウは除いてね☆

でも、ここにずっといたいかと言われれば、それはまた別に話だ。

ラゼットと泳ぐのも楽しいし、みんなでワイワイするのも楽しい。
それにここの人たちは無償で護ってくれれば助けてもくれる。

だけどさぁ、楽しいだけじゃダメなんだよね。
護られるだけってのもガラじゃないというか…

はっきりいってしまえば、ブラックホークに帰りたいなぁ〜

なんて……思っちゃってたりするわけよ。



「テイトぉ、眠いぃぃぃぃ。」


目の下にはくっきりとクマ。


「名前のせいだからな!」


それはもちろんテイトも。


「だって〜。」


昨晩、2人でザイフォンの特訓をした。
見たこともない『それ』に感激した私は、朝方までテイトに教えてもらってました。

だってさ!
なんか魔法みたいじゃない?!
かっこよくない?!
これ使えるようになったら、私も魔法戦士あだ名たん☆だよ!!
子供向けアニメみたいだけどさ。


「名前覚えるの早すぎだし。疲れた。」

「だって!」


これバッチリ使えるようになってアヤナミさんとか驚かせたいんだもん!
そして私がアヤナミさんたちに教えるの!!


「ぐふふ、楽しみ♪」

「…可愛げのない笑い方ヤメロ。」


失礼だなーテイトのくせに。


「ね、私上手になった?」

「そーだな。昨日始めたばっかとは思えない。」


やったね☆


「花まるくれますか?先生!!」
「おぉ。」


やっほーい!
あ〜帰るのがもっと待ち遠しくなった!


「あ、でもやっぱ、−20点。」

「なんで?!」


テイトは静かに教会の煙が立ち上がっているほうを指差した。


「力の加減できずに子供のアスレチック壊したから。」

「不可抗力だよ!!」

「なにが不可抗力だ!バカ娘っ!ラブが嘆いてたぞ。」


あぁ、また来たよ。


「フラウ…」

「バカって言うな!極悪司教が!!」

「バカにバカっていって何が悪い。」

「うっさい極悪面!」

「ま、まぁまぁ2人とも。」


私とフラウの間にカストルさんが割って入ってきた。


「カストルさん……ごめんなさい。」

「いえ、大丈夫ですよ。下手に残さずに、木っ端微塵にしてくれたおかげで立て直しやすいですし。」


あれ?
嫌味??
バカとかって言われるより地味にココロが痛いんですけど。


「周りの花は無事だとさっきラブが言っていました。特訓もいいですけど、気をつけてくださいね。」

「はい。ごめんなさい。」

「けっ。カストルのいうことには素直に謝るのかよ。」


あたりまえでしょ。
フラウに謝ってたまるか。


「名前さん、テイト君、あまり寝ていないのでしょう?少しお眠りなさい。」

「……」


私がカストルさんから目を離して、下を俯けばテイトがひょっこり覗き込んできた。


「どうした?」

「…まだ特訓したい。」

「は?まだ続けんのかよ?!寝ねーと大きくなんねーといけねーとこ大きくなんねーぞ。」


相変わらず癇に障る男だこと。


「もうおっきいからいいもん。」

「…へっ。」


こ、こいつ…
今私の胸見て鼻で笑いやがりましたのことよ。


「別に、俺はいーけど…」

「ホント?じゃぁもうちょっとだけ付き合って!!」


だってさ、今日、私……帰る予定なんだよね。


「カストルさん、もうちょっとだけ、いいですか?」

「…わかりました。ですが…朝食を食べてからにしてください。」

「「はい!!」」


カストルさんは、いい人だ♪
フラウと違ってね!

さて、テイトからザイフォン教えてもらったし、そろそろ帰ろっかな。
でもな〜ホーブルグ要塞は遠いし。
2回も鳥になったとはいえ、自分からは飛べないし…。

ここは一つ、


「ホークザイルを盗って…」

「まてい!」


なんだよぉう、
テイト止めるなよー。

お前も男なら一緒に悪い事しようよ!


「帰るのか?」

「うん。私の居場所はあそこだから。ここも楽しかった、けど私の居場所はここじゃない。」

「でも!ムチ、ふるわれるって…カストルさんが……」

「あぁ、アレね、冗談だと思うの。殺すつもりでふるってるわけじゃない…(と思う)し。」


ま、冗談でムチふるうってのもどうかと思うけど。


「ホントか?」

「もちろん。だって私、あそこ好きだもん。」

「あだ名たーん!!」


にっこりと笑ってテイトと話していると、急に上空からなぜかヒュウガの声が聞こえた。


「え?」


見上げればおもいきり手を振るヒュウガが見える。


「出口にいるからねー。」


そっか、7時すぎちゃったから、迎にきてくれたんだ…
言われて見れば薄暗くなってきてる。


「迎えか?」

「うん!じゃぁね、テイト!ザイフォン教えてくれてありがと!!」

「あぁ!じゃぁな!」


一度テイトにハグして、教会の出口まで走る。

すれ違う人に手を振りながら、出口まで行けば、司教3人組が待っていた。


「やはりですか。」

「カストルさん…。」

「幸せは自分で掴み取るからこそ、『幸せ』なんです。貴女の望む道がそちらなら…もう私は何もいいません。」

「ありがと!ラブラドールさん、アスレチック壊してごめんなさい。」

「大丈夫ですよ。花は無事でしたし、きっとフラウが直してくれます。」

「俺かぁ?!」


頑張って!
とフラウに笑いかければ、フラウが私に耳打ちしてきた。


「やっぱエロ本返せ。」

「やだよ!」

「俺のエロ本全部焼却炉行きになったんだぜ!」

「そんなのフラウが悪いんじゃん!もうこれは私のなんだから。…これから期待だねって言ってたグラビアアイドルの写真集が出たら内緒で送ってあげるから。」





「「交渉成立。」」

「じゃぁもう行くね。待たせてるし。」

「おぅ。貴様に神のご加護を。」


頭をぐしゃぐしゃに撫でられ、私は教会の門をくぐった……




***




「あだ名たーん!」

「たっだいまー!!」


感極まって、両腕を広げていたヒュウガの腕にジャンプしながら飛び込んだ。


「楽しかった?」

「うん!」


ふと横を見ると…
運転席にコナツ。そしてその後ろにアヤナミさんが乗っていた。


「コナツーただいまー!!」


座ったままのコナツに抱きついてみる。


「ちょっ!!名前さん!」


うん、思ったとおりの反応だね☆
可愛いよコナツ。


「アヤナミさんも、ぎゅー。」

効果音つきで、アヤナミさんの首に手を回し抱きついてみる。
フハハハハハハハ今の私には怖いものなんてないのだよ!

だってやっぱ落ち着くんだ。
この人たち。

そろそろチが飛んでくるかなーと思っていたけど、
結局離れてもムチは飛んでこなかった。


「迎えにきてくれてありがと!でもどうして三人で迎えに来てくれたの?」

「任務帰りだから☆」

「ご苦労様であります!」


助手席にヒュウガが乗り込んだから、私はアヤナミさんの横に座ることに。


「行きますよ。」

「はーい!」


元来た空をまた帰る。


「そういえばさ、どうして私が教会にいるってわかったの?」

「あれだけ派手に落ちておいてどの口がそれをいう。」


…あ、知ってたのね。


「しばらく一人で乗るのは禁止だな。」

「アヤナミさん厳しいっす」


ま、また落ちるのイヤだから別にいいけどね。


「あ!そういえば、アヤナミさんはい、お土産!」

「…」


ビシィィィ!!


「あああアヤたん!ここでムチはヤメテ!オレにまで当たってるから!!」

「そうですよ!アヤナミさん!」

「なんだこれは。」


それは、


「見ての通りエロほ…」


バシッ!!!!!!


「ふざけているのか。」

「だってアヤナミさんも男の人だから貰って嬉しいかなーと。」


バチッ!!


「うひゃう!!」


も、もういい加減
ムチ、閉まって!!


「いらないですか?」

「いらん。」

「じゃぁ…コナツ、いる?」

「結構です!!!!!!」


そんなに拒否しなくても…


「ヒュウガは?」

「んーオレ?」


あれ?即効で喰らいついてくると思ったんだけど…
反応がイマイチ…


「オレは…あだ名たんが相手してくれればそういうのいらないし…」

「あげます!何が何でもあげます!ぜひ受け取って!」


相手なんてしませんから!


「ちぇっ。」


無理やりヒュウガにエロ本を押し付けて、やっと一息ついた頃、急に眠気がやってきた。
そういえば寝てないもんなー。


「アヤナミさんお願いがあります。」

「言ってみろ。」

「膝枕してくださ」

「落ちろ。」


ギャ―――!!


「嘘です嘘です!」


今の目、マジで落とす気だったよ!


「何、あだ名たん眠たいの?」

「うん。昨日寝てなくって……」

「オレが横にいたら膝枕でもなんでもしてあげたのに。」

「…横がヒュウガだったら多分お願いしてなかったよ。」

「アヤたんとのその差は何?!」

「なんだろーねー。自分の胸に手を当ててみたら?あーダメだ。ねむ…」


あと10分ぐらいでつくとわかっていても、落ちてくる瞼。必死に開けようとするが、睡魔には勝てず目を閉じた瞬間。


「…」


アヤナミさんの手によって頭を引き寄せられ、私の頭をアヤナミさんの肩に預ける形になった。


「ありがと…ござ、ます……」




***




「あだ名たん寝てないって…もしかして教会の人間に一晩中犯され…」


ビシィィィィ!


「冗談だよ!!」

「…少佐、少しは大人しく座っていてください。」

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