第16話 『火照るカラダ』



アイスも溶ける
カキ氷も溶ける
私も溶ける。

なんですかね、この暑さ。
空調管理されてるはずだよね?

なんで、こんなに暑いんですか?


「あ゛〜づ〜い゛〜〜。」

いつものようにご飯をアヤナミさんの机で食べながら、もう何度目かわからない心の叫びを口にする。


「少しは忍耐が鍛えられるだろう。」


平然と言ってのけるアヤナミさんは一人涼しそうな顔をしている。

本日の昼食はカレーライス。
熱い時に辛いカレーは最高だね!


「ほかほかの真珠のようなライスにかかる熱々のカレールウ。ご飯は日本の食べ物なのに、その上にかかるルウは外国のスパイスなしじゃ作れない。国同士仲良しこよし。ライスとカレールウも仲良しこよし。これで平和。平和ばんざい!」

「貴様の頭も平和だな。」


聞こえない聞こえない……っと。


「甘口、中辛、辛口…カレールウさんはツンデレかしら♪いやんライスさん大変っ☆今日のオレの隠し味はチョコレートだぜ…的な。あ、あまーーーーい!!やっぱカレー×ライスだよね。日本人は知らないうちにカレーとライスの掛け算を……」

「ねぇハルセ、名前何言ってるの??」

「見てはいけませんよ、クロユリ様。」


これも聞こえない聞こえない……


「でもなんで…カレーにグリンピースが入ってるのか理解できないっす。」


ほんと、今のショート寸前の頭では考えきれない。


「栄養も考えてあるんじゃない?」

「グリンピースに栄養なんてあるかー!!」

「ありますよ。ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、食物繊維などがはいっていますからね。」


さすがカツラギ大佐。


「……食物繊維……」


便秘にいいとか……
いや、別に便秘ってわけじゃないんだけど……


「てかビタミンはお肌にいい?」

「はい。」

「じゃぁ食べる……よ。でもやっぱ暑いざます………脱いでいいですか?」

「お前に恥じらいがないのなら構わないが。」

「うぅ…まだ一応あります。」

「ならしっかりと手を動かせ。」

「はぁい…」


いつも空調管理されているのに、こんなにも暑いのはこのブラックホークの執務室だけのお話。

なぜかって?
空調管理室にあるここのエアコンのスイッチだけが壊されていたからです☆


怨まれてるなぁ〜
でも私がなにをしたよ?

怨むんならそこの床で死んでる某グラサン一人を怨んでよ。


「上層部の下っ端のいたずらかな、ハルセ?」

「さぁ、それは分かりかねますが…」

「もし犯人見つけたら殺していい?」


あぁ…クロユリも限界が来てる様だ。
私もご一緒させてね、クロユリ。
半殺しにぐらいはしたいかな。


「だ、だめだ…」


私はさすがに限界が来て、一度自室へ戻った。



数分後…


「まだ、マシになったかな。」


部屋へ戻った理由は、服を代えるため。
どうせ今日の仕事はディスクワークだし、執務室からでることもない。
なら、別に構わないだろう、と着替えてきたのは夏らしいキャミにショートパンツ。
まだ暑い事は暑いが、軍服よりはるかにマシだ。


「そんな格好をしていいと許可した覚えは無いが。」


紫の瞳が鋭く光る。


「つれない事言わないでくださいよ、アヤナミさん。暑くて集中できないと、仕事にならないじゃないですか。それより、この格好で仕事はかどる方がいいでしょう?」

「人が来たらどうする。」

「机の下に隠れます!」


アヤナミさんは諦めたように小さくため息を吐くと、もう食べ終わったのか書類に目を通し始めた。


「あだ名たん!!足も手も細くて白くてキレーだね!」


さっきまで床で死んでたはずのヒュウガが私の側に立っていた。


「ありがとーヒュウガ。…指一本でも触れたら、蹴るよ。」


先に釘を刺しておかなければ。


「そんな誘ってる格好でそれはないよ〜」

「誘ってないから。女の子の夏ファッションなだけだから。」

「夏ファッション最高!だからちょっとだけ…」

「ね、ヒュウガ。コナツのためにも仕事してあげてよ。」


横を見ると、極限まで追いつめられているような顔で書類と向き合っているコナツ。
ただでさえヒュウガの分の仕事もあって忙しいのに、この暑さも加わってかわいそうに…


「私の肌触ってる暇なんてないでしょ?」


コナツがご臨終する前に仕事してあげて。


「ん〜ムリ。だって暑くてヤル気でないんだもーん。あぁ…あだ名たんの腕ひんやりと冷たくて気持ちー…」


だから触るなっての!


「人の腕に頬すり寄せないでもらえます??」


暑っ苦しい。


「女の子の二の腕って、胸の柔らかさと同じだよね。ひんやりと柔らかくてきもちいい。」

「サラリとセクハラ発言も止めて下さい。」


もう、ホント、暑い!!




***




執務室にアヤナミさんと2人っきりになった夕方。
書類に目を通しているだけのアヤナミさんにアイスティをだしながら、なんとなく話しかけてみた。


「だいたい誰がこんなことしたんでしょーね。」

「…こんな暇なことをするヤツは大抵検討はつくがな。」

「う〜ん。その方たちはアヤナミさんたちのことが好きなんですね。」


書類に目をやっていたアヤナミさんの瞳は私に向けられた。


「何故そう思う。」

「イヤよイヤよも好きのうち。っていいますし。」


ツンデレってやつだよ。
ま、えらくツンの度合いが強いようだけど。


「ポジティブだな。」

「はい。明るさと元気だけが取り柄なものですから。ふぃ、それにしても暑い。」


たいして気にもせず胸元をパタパタさせて風を誘う。


「名前。」


自分の机に戻ろうとすると、急に呼び止められてまたアヤナミさんに近づく。


「なんですか?」

「女ならもう少し危機感を持て。」


言っている意味がわからなくて小首を傾げる。


「露出が激しすぎると言っている。」

「でも暑いし…」

「少しは我慢というものを学べ。」


そういって投げられたのはアヤナミさんの軍服の上着。


「えっ?!」

「それぐらいは着ていろ。」


書類に視線を戻したアヤナミさん。


「…はい。」


私はいそいそとアヤナミさんの上着に袖を通した。

が。
袖はブカブカ、丈は長く私の短パンを隠してしまうほどで、反対に…


「いやん!あだ名たんエロイ!!」


なんてタイミングが悪い人…
こんなときに戻ってこなくても……


「ここのエアコンのスイッチ壊したやつ見つけて半殺しにしてきたよ☆それにさっき壊れたスイッチなおったから今から冷房効き始めるよ♪」


そりゃどうも。


「ねぇねぇ!この上着アヤたんの?!なんか上着の下は何も着てないみたいでさっきの服装以上にエロ…」


ビシィィイィィ!!


「黙れヒュウガ。」

「ゴメン、アヤたん!!」


ムチで叩かれているヒュウガを見ながら何となく思った。

この上着、着てるとアヤナミさんの香りがして、まるでアヤナミさんに抱きしめられているみたいだ。


「…っ」


急に恥ずかしくなって、私はきっと赤くなっているであろう顔を下に向けた。


…アツい。


でもこのアツさは冷房が効き始めても、火照ったままなんだろうね…


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