逃避二日目!!
貴方に
どんな顔して合えばいい??
いつもどんな顔して、どんな風に話しかけていたっけ?
わからない、
わからないよ。
「あれ?名前さん?!おはようございます。ボクより早いなんて珍しいですね。」
いつもならば一番乗りなのであろう、コナツが朝日の射し込む執務室に入ってきた。
「おはようコナツ。」
「昨日、大遅刻だったから心でも入れ替えたんですか?」
「あ、はは…」
私がそんなわけないじゃんか。
眠れなかったのよ。
昨日はこれでもかっ!ってくらい眠れたのに、今日は…一睡もできなかった。
一日や二日ぐらい仕事で徹夜するのは大丈夫だけど…
ヒュウガからキ、キスされたから眠れなかっただなんて…
仕事で徹夜するより精神的に疲れた。
だって、ヒュウガと視線が交わってキスされた感触までベッドの上で頭の中でずーっとでエンドレスリピートだよ?!
寝れるわけがない。
また一人悶々としているとハルセさん、クロユリ中佐、カツラギ大佐やアヤナミ様が執務室へ続々と入ってきた。
そして皆揃いも揃って言うんだ、『珍しいですね!』って。
私の早起きがそんなに珍しいかコノヤロー。って言えば「日頃の行いのせいだ」なんてアヤナミ様に痛いところを突かれてしまった。
「名前ー。抱っこー!」
「はいはい。」
クロユリ中佐を抱き上げてイスに座った。
「名前、目の下にクマができてるよ。」
「あぁ〜これはお化粧です。マスカラ失敗したんです。」
「あれ?でも、本当はするのが面倒なだけなくせに、『女の子は笑顔が一番のお化粧だからしないんです!』って言ってなかったっけ?」
「…じゃぁ、これは一種のお化粧の仕方です。マスカラを目の下に塗るという新しいお化粧です。」
お願いだからこれ以上聞かないでください、中佐。
「化け物に化ける化粧をするなんてやっぱり名前は人とは一味違うね♪」
……
「コナツぅ〜、中佐が苛める〜!!」
中佐から逃げるようにしてコナツに抱きつく。
「あぁもう、冗談に決まってるじゃないですか。」
いや、今のは絶対冗談なんかじゃなかったよ!
ガチャ。
「おっはよー」
ドアに背を向けてコナツに抱きついていてもわかる。
今の声は、ヒュウガだ!!
よし、作戦決行だ。
ただ早くから執務室にいたわけじゃないもんね。
皆が来る前に今日すべき仕事を半分終えた私は、今からヒュウガと入れ替わるように執務室をでて各部署に書類を回し&受け取り、執務室に戻ってすぐアヤナミ様と二人で会議に行き、終わったらまた入れ替わるようにヒュウガたちは任務のため敵地へ。で、私はその間に残りの仕事を追え、会うこともなく今日の仕事は終了!
ばっちりでしょ!
ばっちりでしょ!!
題して、『ヒュウガを避けて避けて避けまくろう大作戦っ!!』
ってことで、
「アヤナミ様、私、ちょっと各部署出回ってきます!」
アヤナミ様の返事も聞かずに、私は目を合わせる事もなくヒュウガの横を通り過ぎて執務室を出た。
それからは順調。
各部署でヒュウガに合うことはまずないし、昼食は皆とずらして食べたし、会議に乱入してくることもないし、順調順調♪
国を一つ滅ぼそうかという恐ろしい会議で一人ニマニマしてしまった。
とりあえず会議も終わり、アヤナミ様とは別れた。
アヤナミ様はまたこれから会議なのだ。
お忙しい人だこと。
私はこれから敵地に出かけていて誰もいない執務室でゆっくり優雅にコーヒーでも飲みながら書類を処理していこう。
ふんふ〜ん♪
足取りが軽い。
給湯室でインスタントコーヒーを淹れようとやかんに水を入れて沸かし始める。
その際も鼻歌が止むこともなく、浮き足立っているままだ。
「ご機嫌だねぇあだ名たん。」
「うん。全てが予定通りだから………ね?」
あれ?今私誰としゃべって…
振り向こうとすると急に後ろから抱きしめられた。
「うにゃっ!!」
「はいは〜い。お待ちかねのヒュウガだよ♪」
「…誰も待ってない。」
「またまたそんなこと言って〜。で?予定通りって何が予定通りなの??」
「…」
「…ずいぶんとまぁ避けてくれちゃって。」
「な、なんで、いるのよ…」
今は、任務で敵地にいるはずでしょ。
「あだ名たん、頭いいよねぇ。でも一つだけ見落としてることがあるよ。」
「…何。」
「オレがサボり魔だってこと。」
抱きしめられている腕にギュッと更に力が篭った。
「…ヒュウガがサボるのはディスクワークだけだと思ってた。」
「今日は特別だよぉ。なんてったて、好きな子がオレのこと避けてるんだから気になっちゃって…」
は?!
「好きな子?!」
「えぇ〜!オレ言ったでしょ。好きな子、目の前にいるって。キスまでしたのに…」
…
やばい、キスのことしか頭になかった。
ど、どうしようかと視線を泳がしていると、くるっと体の向きを変えられて、また抱きしめられた。
向かい合うように抱きしめられ、視線が降り注ぐ。
身長差があるせいで、私は見上げないとヒュウガの顔が見えない。
今はそれが救いだった。
振り向かされるときに一瞬だけ見えたあの真剣な瞳を見なくてすむのだから。
「返事は?」
「…そ、そこは男らしく『待つよ』とかって言えないの?」
「あだ名たん相手にそんな余裕ないからねぇ♪」
…
「………む、り。」
「なんで?」
「ムリなものはムリ!」
「そっか、わかった。」
腕の力が緩み、少しだけ体が離れた。
残念のような、ホッとしたような…
だけれどその瞬間、また唇にヒュウガの唇が触れた。
「んっ///!!…っ、ん……」
昨日とは違う啄ばむようなキス。
何度も何度も触れては重なるキスを繰り返す。
ようやく解放されたかと思ったときには私の両手はヒュウガの胸元にすがりついていた。
「っ///」
そのことが恥ずかしくて、急いで突き放した。
「わ、私、ムリって言った!!なのに…」
「だって『イヤ』だとは言われてないよ。」
「恋人同士でもないのにムリ!っていうか、。恋とかしたことないからわかんないし!ムリ!」
「『ムリ』なら付け込む隙はあるよねぇ♪恋したことないならオレとしたらいい。オレが全部教えてあげるよ。愛し方も、キスも、その先も全部…」
「お、お断りします!」
「イヤがる割にはさぁ、逃げようとしないよね、この状況から。抱きしめられていても、もがきもしないなんて、さ☆」
「そ!それは!!」
嬉しいからとか、そ、そ、そんなんじゃなくて!!///
「ヒュウガのほうが私より強くて、どうせもがいても逃げれないってわかってるから!!」
「じゃーあ、こんなことしても逃げないんだ。」
腰に回されていた腕がスルリと下におりた。
ゆっくりと太ももを撫でられる。
「ぎゃっ!!変態!!痴漢!!やめっ!」
思い切りヒュウガの胸元を叩き、ひるんだ隙にその腕の中から逃げた。
「ヒュウガの馬鹿!エロ!」
「ほら、逃げた。」
「…っ。」
にんまりと笑うこの男が憎い。
「ね?この理由わかる?」
ヒュウガは私の耳元に唇を寄せた。
「理由は簡単♪あだ名たんはオレに抱きしめられて嫌じゃなかったから、だよ☆」
ドクリと心臓が跳ねた。
「…」
そんな時、お湯が沸いたのか、やかんが私を呼んだ。
「…」
私はお湯をマグカップに注ぎ、ヒュウガはそんな私を凝視。
お互いに無言状態だ。
「……」
コーヒーの香りが立ち込める。
「あだ名たん、急にチューされて困ってる?」
「…」
無言は肯定だ。
「…ゴメンね、困らせて。でもお願いだから避けないでくれると嬉しいなぁ。好きな子に避けられるのはやっぱりオレでも辛いから、ね☆」
あ…
悲しそうな、苦笑い。
私、ヒュウガにこんな顔させちゃった…
「…ごめん、避けるのは、やめる…。ただ、どんな顔して話したらいいのかわかんなくって……ごめん。」
「うん♪…でも…まぁ、意識してくれたってのは嬉しいんだよー。」
そういってヒュウガは私の頭を撫でながら笑った。
一瞬たりとも離されることはないその瞳に胸が、きつく締め付けられた。
やっぱり
貴方に
どんな顔して合えばいい??
いつもどんな顔して、どんな風に話しかけていたっけ?
わからない、
わからないよ。
昨日唇が重なった瞬間に、私達の関係は変わってしまったんだ。
だって貴方を見ているだけでこんなにも胸が苦しいんだもん。
私をこれ以上困らせないで。
お願い、そんな愛おしそうな瞳で
『見つめないで』
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