逃避三日目!!!
貴方を思うだけで
苦しくて、
切ないの。
「ねぇねぇ名前!」
無邪気にクロユリ中佐が話しかけてきた。
その笑顔に癒される。
でも、中身は真っ黒なんだよなぁ、この子。
そりゃもう、びっくりするくらい。
「あ、アヤナミ様、そろそろ会議の時間です。」
「わかっている。行くぞ、名前。」
「はい。」
今まで会話をしていたクロユリ中佐に手を振って、私はアヤナミ様と一緒に執務室を出た。
まぁ、昨日はもうヒュウガとは何にもなくって、二人でコーヒー飲みながら書類整理してたらコナツたちも帰ってきて、サボったヒュウガがコナツに怒られているのを眺め見ながら、やはり緊張していたのか私はそっと胸を撫で下ろしたのを覚えている。
『好き』だという感情をもたれているというのはすごく嬉しい。
けれど、それと同時にどうしたらいいのかわからなくなる。
小さくため息を吐いて会議室に向かうアヤナミ様に声をかけた。
「アヤナミ様、ちょっとお手洗い行ってきます。先に行っててください。」
「遅れたら、わかっているだろうな…」
「わかってますって。」
苦笑いしながら、分かれた。
会議に遅れでもしたらムチでお仕置き決定だ。
あれは痛い。
かなり痛い。
経験者は語るってやつだ。
過去に一度遅れて行ったが、
できればもう二度とあの過ちは繰り返したくない。
背中に冷や汗をかきながら化粧室の鏡の前に立った。
別にトイレしたいわけではない。
ただ、あのまま会議に参加しても身に入らなさそうだったから、顔を洗いに来ただけだ。
手をかざすだけで自動で出てくる水。
その冷たい水に触れ、バシャバシャと顔を洗うと、ひんやりと顔が濡れ、気持ちが少しだけさっぱりした。
ハンカチで顔を拭い、もう一度鏡を見る。
前髪が、少しだけ濡れていた。
ため息を吐きながら化粧室を出て会議室へ向かう。
…その途中だった。
会議室へ行くとアヤナミ様の横に座った。
まだバラつきのある会議室はお偉い方々の自分の自慢話で賑わっている。
「目は覚めたか?」
「…少し。」
「その割には眉間に皺が寄っているな。」
「怒ったときのアヤナミ様みたいですか?」
「…確認したいか?」
アヤナミ様は懐のムチに手をかけた。
「冗談です。」
へラッと笑うと、少しだけ、ほんの少しだけアヤナミ様も笑った気がした。
「……私、今モテ期みたいです。」
「…」
さっきの表情とは違って、アヤナミ様は呆れたように眉を潜め私の後頭部を殴った。
「痛いです!!手加減してくださいよ!」
あ、でも、これでも手加減してくれたのかな。
手加減されてなかったら首もげてたかもしれないし…
「意味のわからないことをいうからだ。」
「本当のことなんですよ!」
実際、
さっき…
知らない男の人から告白されたのだ。
突然でびっくりした。
でももちろん丁重にお断りした。
だって、ねぇ。
知らない人だし…
それに…
あの時なんでか
ヒュウガの顔が脳裏に浮かんだ……
「意味わかんない。」
ポツリと呟いた言葉がアヤナミ様の耳に届いたのか、急に頭を撫でられた。
「中身の入っていない頭で無理に考えるな。」
…
「それ、慰めてくれてるんですか?貶してるんですか?」
「さぁな。」
アヤナミ様は一瞬だけ微笑を浮かべた。
そういえば、私…あの告白、有耶無耶にしたままだったなぁ…
現実見なきゃ…
いつまでも有耶無耶にしたままっていうのもヒュウガに失礼だし。
でももうちょっとだけ現実逃避していたいなぁ。
だいたい、現実逃避ってのは現実を直視しているからこそするものよね。
ま、だからって逃げていい理由にはならないんだけれども…
わかんない。
自分の答えがわからない。
付き合うのが無理だったらさっきみたいに『丁重にお断り』すればよかっただけのことなのに。
それなのに、私は未だに悩んでいる。
それは…好きってこと?
ヒュウガのことを思うだけで胸が高鳴るのは、ヒュウガが好きだって…叫んでいるの??
…好き??
私、ヒュウガのこと…好きなの??
…とくん。
あぁ、そっか。
やっとわかったよ、この気持ち。
貴方を思うだけで苦しくて、切ないの。
それは貴方を好きだから。
……うん。
私は、貴方が『好き』
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