逃避最終日!!!!!





現実逃避≒現実直視





「ふぃ〜。」


本日の仕事も一段落。
イスの背もたれに背を預けて天井を仰ぐ。
字の見すぎで目が痛い。

とりあえず一息いれようと背伸びをして腰を上げた。


「…あれ?」


なんか、一人足りない。


「ヒュウガは?」


コナツに問いかけるもうな垂れて首を振るだけだ。
だがそれだけでわかってしまう悲しい性。

あぁ、またサボりにいったんだね。


「……コナツ、コーヒーでいい?」

「……ありがとうございます。」


私にしてあげられることといったらこれくらいさ。
まったく、ヒュウガってば仕事しなさすぎ。
あれで私より強いだなんて……

やかんに荒々しく水を入れて火を点ける。

あ、でもヒュウガってやるときはやるんだよな〜
ギャップが激しすぎるけど。

クスッと笑えばやかんが私を呼んだ。

カップにお湯を注いでいく。

そういえばこの前ヒュウガが…………って、なんで私さっきからヒュウガのことばっかり考えているんだろう。
だめだ、侵食されてきてる。

頭をブンブンと振って気を取り直した。


「はい、コナツ。」

「ありがとうございます。」


コナツだけではなく、皆のコーヒーを淹れた私は、みんなの机にそれぞれ置いていった。

一気にコーヒーの香りが立ち込めた執務室。
そこにはやはり一人足りない。


「ヒュウガはまだ帰ってこないの?」

「はい。もうそろそろ3時間が経ちますね…。いい加減探しにいかないと…」

「…あ、」

「?どうしたんですか??」

「…あ、あのさ…私が、探しに…行こっか??」

「でも…」

「ほら!コナツまだこんなに書類溜まってるし、私、今日の分だいたい終わってるから…手が空いてるっていうか…。」

「……では、お願いしてもいいですか?助かります。」

「うん!行ってくる!!」


自分の分のコーヒーをこぼさないように置いて、私は執務室を出た。


「……微笑ましいですね。」

「少々じれったい気もしますが…」


カツラギ大佐とハルセさんは小さく微笑をこぼした。





食堂、温室、自室…と、適当に探しまわるが一向に見つかる気配がない。
ヒュウガがどこにいそうかコナツに聞いてくるんだったと後悔したのは、探し回って30分が経ったころ。

私は中庭に来ていた。
そして広い中庭の噴水の近くで女の子3名に囲まれているヒュウガを発見。
できれば見たくなかった光景だ。

別に鼻の下を伸ばしているわけでもないのだが…
彼女という立場でもないのだが…
ちょっぴり複雑な心境になってしまった。
それも、自分より可愛くてスタイルも抜群な女の子ときた。

ヒュウガは私に背を向けるようにして立っているせいか私の姿には気づかない。
女の子達もヒュウガに夢中なのか、周りすら見えていないようだ。


「今度私達と遊びに行きませんか?」


これが最近でいう肉食系ってやつなのか?
すごく積極的というか…なんというか…すごい。

ヒュウガの右腕に女の子が腕を絡めた。

顔だけはいいからね。
そりゃモテるよね。


「彼女さんとかいらっしゃるんですか?」


あ、なんかヤバイ展開かも…
あの子、絶対…


「私とかどうですか?」


ほら……。


それからはあんまり覚えていない。
考えるより先に行動に出ていた。
やっぱり中身の入っていない頭で無理に考えるもんじゃないですね、アヤナミ様。

気がつけば私はヒュウガのしっかりとした左腕を両手で掴んでいた。


「あれ〜?あだ名たん??」


気の抜ける声。
そんなものはお構いなしに私は叫んだ。


「ヒュウガは私のものなのーっ!!」


ついに言ってしまった。と後悔し始めたのはどれくらい経ってからだろう。

ぽかんとしている女の子達。
ヒュウガは…

いや、ヒュウガの顔は見れないでいる。
なんっつぅ恥ずかしいことをしてしまったんだろう。


「……///」

「……。……ってことなんで、ごめんねぇ。」


ヒュウガは自分の右腕に絡まっていた女の子の腕を優しく解いた。


「オレに触れていい女の子はこの子だけだから。」


そういって私の手を握って歩き出したヒュウガ。

恥ずかしいのと、なんであんな行動しちゃったんだろうという困惑で足が絡まってうまく歩けない。

ヒュウガがやっと止まってくれたのはあまり人気のない、中庭で一番大きな木の下だった。


「あ、あの、」

「あだ名たん、ちゅーしていい?」


…昨日からなんなんだ。


「や、やだ///」

「オレはしたい。」

「やだ///」

「したい。」

「ヤダ///」

「したい。」

「……っ///いちいち確認とらないでよっ!恥ずかしいんだからっ///」


そう叫ぶと唇にヒュウガの唇が触れた。

ぬるりと舌が私の口内に入ってくる。
それは私の舌と絡まり、熱く熱を持っていた。

口付けをしながら二人の距離は縮まり、唇が離れた頃にはきつく抱きしめられていた。


「確認しなかったらしていいんだ?」

「…誰もそんなこと言ってない///」


ほんと、素直になれない自分に呆れる。


「さっきのオレが名前のものって言葉、うぬぼれていいんだよね?」

「……う、ん///」


自分、素直になれ。
今日ぐらい、素直に……


「す、……き…。」

「オレも。好きだよ、名前♪」


そういったヒュウガの唇が頬に触れた。


「あ、でも一つだけ名前勘違いしてるよ〜。」

「?」


するりとヒュウガの唇が私の耳に近づいた。


「オレが名前のもの?冗談♪名前がオレのもの、でしょ。」



この答えを求めよ。

現実逃避≒現実直視
意味:現実逃避は現実直視とほぼ等しい
(だって、現実逃避は現実直視しているからこそできるもの)



答え:

現実逃避≒現実直視=私は貴方を愛し始めた


―現実逃避は現実直視とほぼ等しく、『私は貴方を愛し始めた。』―

END

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