「少佐ぁあぁぁ!一体どこに行っていたんですか!!」


執務室に入ると、コナツさんがヒュウガさんに詰め寄ってきた。
なんだか目の下にクマが出来ている。
可愛そうに。


「ごめんごめん☆救世主を呼びに、ね♪」

「救世主?…あ、えっと……名前、さん?」

「はい、お久しぶりです。」

「ささ、早くアヤたんとこ行ってあげて♪」

「はぁ…」


急かすヒュウガさんに背中を押され、私は履きなれていない細く高いヒールで一生懸命歩き、奥の扉を数回ノックして返事が返ってくるなりそっと中へと入った。


「……あの…お仕事中、ごめんなさい…」


私が扉を閉めるまで書類から顔も上げなかったアヤナミさんだったが、声をかけるとそれはゆっくりと上げられた。


「……名前、そんなところで何をしている。」

「あの…」

「…ヒュウガが呼んだのか?」

「えっと…ハイ。…というか半ば強制的に拉致られました。」

「大体の予想はつく。あいつめ…書類から逃げるために…。」


私は小さく苦笑いした。


「少し、休憩しませんか?」

「……あと少しでキリがいい。座って待っていろ。」


目線で前にも座ったことのあるソファを差される。

私はあの時の出来事を思い出して少しだけ赤面すると、言われた通りに座った。


アヤナミさんが筆を滑らせている音だけが響く中、急に話しかけられた。


「名前にしては珍しい服を着ているな。」

「あ…これは……。来る途中にヒュウガさんが買ってくださって…。」

「ヒュウガが?」

「はい。」

「何をどうしたらそうなった。」


……い、言えるはずがない。
でも、なんだかこの前と同じシチュエーションだ。

この前のから学習すると、ここは素直にしゃべったほうが身の為。


「アヤナミさんが…私の事を子供扱いするんですって相談したら…こうなりました。」

「そうか。人選を失敗したな。」


…ハイ。
私もそう思いました。


小さくうな垂れていると、アヤナミさんが腰を上げてこちらに近づいてきた。

私の目の前に立たれ、上から見下ろされる。


「あの…、アヤナミさん??」


上を見上げてアヤナミさんを見ると、立ったままのアヤナミさんの手が私の顎を更に上にあげ、薄っすらと開いた唇にアヤナミさんの舌が入り込んで来た。

舌を絡め取られればいつにも増してアヤナミさんの唾液が口内に入ってくる。

それなのに上を向かされすぎているせいでそれを上手く飲み込めない。


「ッ、ふ…んぅ…」


激しく口内を荒らされていると、口の端から唾液が流れ出た。

アヤナミさんは唇をそっと離すと、その唾液を親指の腹で拭った。

なんだかそれがとても色っぽくて、唾液で濡れた唇と赤い顔を右手の甲で隠すと、腰に腕を回されて肩に担がれた。

手足がプラーンとなる。


「アヤナミさん、どこに行くんですか?!」

「私の自室だ。紅茶を淹れろ。」

「ちょ、この体勢見えます!」


パンツ見えますって!


「手で隠せ。絶対他人に見せるな。」

「そんな無茶苦茶な!」


必死に手で隠しつつ、スカートを引っ張る。

ヒュウガさんたちのいる執務室を通る際、「休憩していい。」と皆に言っていた。

とりあえず私の役目は果たせたようだ。


「…ピンクかぁ…♪」


と、ヒュウガさんが呟いたのはこの際空耳ということにしておこう。


「アヤナミさん、一人で歩けます!」

「名前のペースに合わせるよりこの方が早い。」


そうでしょうけど!!



私が必死に抵抗してもアヤナミさんはビクともせず、ある部屋に入った。

その入り口でやっと下ろされる。


「ここがアヤナミさんのお部屋ですか?」

「あぁ。」


軍服をソファに脱ぎ捨てるアヤナミさんを背後に、私は紅茶を淹れるためにキッチンを借りることにした。


それにしても殺風景な部屋だなぁ〜と思いながらハタと気付く。


「あれ?」


紅茶の茶葉がない。


戸棚を開けてみるもののそれは見当たらない。
茶葉どころかティーポットもないではないか。


「アヤナミさーん。茶葉はどこにありますかー??」

「そう叫ばずとも聞こえている。」


アヤナミさんはまだソファのところにいると思っていたが、いつの間にかすぐ後ろから声がした。


「ごめんなさい、茶葉が見つか、ら……」


私は言いかけた言葉を途中で止めて口を噤んだ。

ピッタリと背中にアヤナミさんの体温を感じたからだ。


何事かと固まっていると、スルリと太ももを撫でられた。


「ひゃっ!」


びっくりした私はその場から逃げようと足を横に踏み出したが、履きなれていない高いヒールのせいで、倒れそうになった。

高いヒールは履きなれていないとやっぱりダメだ。

しかし、それは簡単にアヤナミさんの腕が私の腰に回って支えてくれたおかげで助かった。

この状況からは全くと言っていいほど助かってはいないけれど。


「ア、アヤナミさん…私は茶葉を…」

「そんなものはない。私は名前の紅茶しか飲まぬからな。」


嬉しいお言葉をありがとうございます。

でも…


「じゃぁ、なんでさっき紅茶を淹れろだなんて…。」


腰に回っていたアヤナミさんの手が上に這いあがってきた。
かと思うと、胸の膨らみを優しく掴まれた。

そしてまた太ももに手が這う。
スルリとスカートが捲られ、際どい部分にも大きな手が這った。


「キスだけで返すとでも思っていたのか?」


ちゅ、とリップ音をさせてうなじにキスを落とされた。


硬直していると、抱きかかえられてベッドへと投げるように下ろされた。

体勢を整える前に上に覆いかぶさってくるアヤナミさんを見て、やっと事態を把握する。


大人の世界に足を踏み入れそうです。


「おおおお仕事はもういいんですか?!」

「名前が休憩をしろと言ったんだろう?」

「でででででも、これじゃ休憩には、」

「名前不足だ、黙って喰わせろ。」


くくくくく喰う?!
え、私、今から戴かれる?!


「そ、そんないきなり!」


両手でアヤナミさんの胸板を押すがビクともせず、それどころかあっさりと掴まれて頭上でシーツに縫い付けるように押さえられた。


「この間、続きはまた後日と言ったはずだが?それに子供扱いは嫌なのだろう?なら希望通り大人の扱いをしてやる。」

「私がいいたいのはそういうことじゃなくって!」

「名前不足な上にヒュウガに買ってもらった服なんかを着ているから、イライラしているんだ。これ以上しゃべると優しくする保障はせぬ。」


胸もとのボタンを外され、胸元が肌蹴る。
スカートは少し捲られるだけですぐに下着が見えた。


スカートの裾から手を中に入れられ、二つの膨らみをやわやわと揉まれる。

突起を舐められたりと、胸の感覚に夢中になっていると、下着越しの秘部にアヤナミさんの指が這った。

それだけで甘い痺れが体中を駆け巡って、熱い吐息がもれた。


「っ、ぁ…んぅ…ゃ…」

「名前がしゃべっていいのは、私を求める言葉と甘い声だけだ。」


強引な言葉とは裏腹に愛撫する手つきはどこか優しい。
胸を触る手も、ワンピースを脱がせる手つきも、初めての私に気を使ってくれているとわかる。

先程まで拘束されていた両手はいつのまにか自由になっていて、私は覚悟を決めてギュっとシーツを握った。

そんな私を褒めるかのように頭を撫でたアヤナミさんは、タイツと一緒に下着を下ろし、それを床へと放った。

大人の扱いをされているはずなのに、どこか子供扱いだ。
でもやっぱり嫌いじゃなくて、むしろ心地良ささえ覚える。


「っぁ…ッ、ん…」


太ももを開かれて数回そこを指で解されたが、イマイチ解れないのか、アヤナミさんはそこに舌を這わせた。

自分の愛液とアヤナミさんの唾液が交じり合う淫靡な水音が部屋に響き始めて、私は耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
だが、耳を塞ぐ余裕さえない。

生ぬるい舌の体温とねっとりとした感覚にめまいさえする。

指で膣を押し広げられながら、少し上の敏感な部分を舌で突かれれば体がビクリと跳ねた。


「性格も素直だが、体も素直だな。」

「ゃ、ぁ…あ、ァ…」


侵されるは体だけではなく聴覚もだ。
触覚も、視覚も、すべてが侵される。


やっと滑りが良くなってきた秘部の中にアヤナミさんの指が埋め込まれた。

長い指は中を描きまわして押し広げ、一本、一本と指を増やされる。

その度に痛みが増したが、シーツを握ることによってそれを何とか誤魔化した。

そうしていると、ゆっくりと指を出し入れされて絶頂を迎えさせられた。


「っは…ッ、…」


乱れた息を整えていると、アヤナミさんはまた私の体を覆った。
それと同時に秘部に感じる感覚に身を硬くする。


「力を入れるな。」


キツくシーツを握っていた手をアヤナミさんの首に回され、私はギュウッと抱きついた。


「あまりくっつくと動けぬだろう。」


困ったように微笑を浮かべながら言うアヤナミさんは私の額にキスを落とした。

それから目尻、頬、鼻の先、唇…。

そうして触れるだけの優しいキスに気を取られていると、それはゆっくりと、でも確かに私の中に入ってきた。


アヤナミさんの首に回している手に力が入る。
身の裂けるような痛みに思わず爪を立ててしまったが、アヤナミさんは優しく口づけを繰り返してくれる。

入って来ている途中で、私の中で何かが破れたような気がした。


「っぁ、あ…あ、ぁ」


痛みと共に快楽が押し寄せる。
アヤナミさんが吐く熱い吐息に私はさらに感じた。


一度奥まで入りきると、アヤナミさんはゆっくりと腰を動かし始めた。

内臓が迫り上がってくるような息苦しさ。

最初は痛みが勝っていたものの、次第にそれは快楽が勝っていった。


「ぁっ、あ…んぅ、アヤ、ッナミさっ」


揺さぶられながら吐息混じりにアヤナミさんを求める。

アヤナミさんは私の生理的に浮かんだ目尻の涙を舌で舐め取ると、太ももをさらに広げるように持ち上げ、打ち付けるスピードを速めた。


もうすぐそこまで来ていた絶頂がさらに近くなってゆく。
私はその感覚を喜び半分、恐怖半分で待った。

嬌声は引っ切り無しに出る。

しかし一際嬌声が高く、大きくなる。


私は背中を逸らせて絶頂へと達した。


アヤナミさんもその締め付けに耐え切れないとばかりに、中から引き抜いて私の腹部に白濁を放った。



私はもう力なんて入らないと、グッタリと四肢をシーツの上に下ろした。
火照った体にシーツの冷たさが気持ちいい。

ボーっと窓の外を見るといつの間にか夕方になっていた。


アヤナミさんはティッシュで私の腹部に散った白濁を拭い取り、それをゴミ箱に放った。


「シャワー浴びるか?」

「…あと、で…」


普通に声をだしたつもりだったのに、喘ぎすぎたせいか声が掠れた。

アヤナミさんは私にブランケットを掛けると、服を着て冷たいミネラルウォーターを持って来てくれた。


「ありがと、ござ…ます。」


勢い良くそれを半分ほど飲むと、アヤナミさんはそれを受け取って残りの全てを飲み干した。
空きのペットボトルはティッシュ同様、ゴミ箱に放られた。


「大丈夫か?」


私の横に座り、頭を撫でるアヤナミさんに頷く。


「そうか。…そういえば、前に私との約束事を破ったな。」

「約束事、ですか?」

「前に軍服を着て私に会いに来た時、『忍び込むな。』と言ったら頷いただろう?」

「あ…」


そういえばそんなこともあったような…
でも忍び込みたくて忍び込んだわけではなく…



ベッドがギシリと音を立てた。

アヤナミさんが私に覆いかぶさってきたのだ。


「え…??」


目を丸くする私を他所に首筋にキスを落としていくアヤナミさん。


「体は大丈夫なのだろう?なら今度はお仕置きの時間だ。」



……へ?



や、やっぱ無理ですー!!!!




***




アヤナミが執務室に戻ると、そこにはヒュウガが一人、楽しそうに参謀長官専用の椅子に座ってクルクルと回っていた。


「あだ名たんは?」

「眠っている。」

「気絶させちゃったの??」

「今日は泊まらせると連絡は入れておいたから大丈夫だろう。」

「え〜そういう問題〜?♪」


ヒュウガは面白そうに笑った。


「せっかくあだ名たんを襲わないために、欲求収まるまでしばらく会うの我慢してたのにね♪」

「貴様が連れてきたのが原因だろうが馬鹿が。」

「あだ名たんを大切にしたい気持ちはわかるけど、我慢は体に良くないんだよ〜?」

「貴様はもう少し我慢というものを覚えて仕事をしろ。」

「あだ名たんとのめくるめく情事は楽しかった?」

「黙れ。」

「もう未成年の子に手を出すなんてアヤたんってばロリコン〜。」


「黙れといっているだろうが。名前だから好きになっただけだ。そしていい加減退けろ。」


アヤナミはドカッとヒュウガを蹴って椅子から落とした。


「ひどいなぁアヤたん。今日提出の書類を放ってあだ名たんとのセックス楽しんだくせに〜。」

「まだ22時だ。今日は終わっていない。」

「はいはい。じゃ、オレも寝よ〜っと♪」


「オヤスミアヤたん☆」と出て行ったヒュウガに見向きもせず、アヤナミは書類を早々に終わらせるために椅子に座ってペンを手に取った。


名前が目覚める時は側にいてやりたい。


名前と出会って、恋愛という厄介な感情と思考を持ったものだと、喉の奥で小さく笑った。

不思議と、嫌な気分ではなかった。


END

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