アヤナミVer
怜悧冷徹、目的のためなら手段を厭わないとされるアヤナミ参謀長官は今日も絶賛無表情だ。
この会議中、彼が遠くに座っていてもわかるのは、私が彼に恋とも言えるような感情を抱いているからなのだろう。
きっと彼からしたら私なんて南瓜やじゃが芋にしか見えないのだろうけれど。
そんなことを思っていたせいか、バチリとアヤナミ参謀と目があってしまった。
速攻で目を逸らしてしまったのは後ろめたさがあるからだ。
誰だってジッと誰かに見られていたら気分を害するに決まっている。
失念していたが、あのアヤナミ参謀が人の目線に気付かない訳がないのだ。
同僚たちとの飲み会の席で『アヤナミ参謀が好き』と酔った勢いでカミングアウトした時、皆に『やめた方がいい!』とアヤナミ参謀の非道さについて力説されたけれど、この気持ちが揺らぐことはなかった。
顔は可愛いのに性格はそうではない方も世の中にはたくさんいるわけで、きっとその逆も存在すると思うのだ。
事実、私は見てしまった。
とある晴れた日の中庭で、アヤナミ参謀が猫をジッと眺めた後、ツナ缶をあげていたのを。
私が自分の目を疑った瞬間だ。
最初は目で射殺す訓練でもしているのかと思ったが、そうではなかったのだ。
猫を見つめるアヤナミ様…を見つめる私という何とも不可思議な出来事が起こったわけなのだが、つまるところ、アヤナミ様は実は優しい方なのではないかと私は思っている。
そうして彼の見方を変えた瞬間、何だか胸がきゅんとしたのだ。
ああ、思い出しただけで胸がキュンキュンしてきた。
今私が犬ならばきっと尻尾を千切れんばかりに振っていることだろう。
同僚には『変態』と罵られることもあるが、それも自負している。
逸らしていた目線をアヤナミ参謀にもう一度向けると、彼は私に向かってウインクをしてきた。
ちょっと待て。
貴方様は私のハートを更に射止めるつもりですかかぁあぁぁぁ!
望むところだ!と涎をじゅるりとしたところで、後頭部に凄まじい衝撃が走った。
「な、なにっ?!?!」
「私が議長を務める時に居眠りとはいい度胸だ。」
会議はすでに終わっており、私は背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
一体どこからが夢だったのか、今はもうよくわからない。
アヤナミ参謀の目線も、射止めるというよりは射殺しそうな勢いだ。
「すすす、すみません!」
「反省文を提出しろ。」
「ははは反省文ですか?!?!」
なんだその学生みたいな感じ!
「文句があるのか?」
「いえ、…ないです。」
視線だけで飛んでる鳥も射殺せそうな目をしているが、きっと、きっとこんな厳しいアヤナミ様にも優しさはあるはずなんだ。
きっと、きっと……
「最低枚数は30枚だ。」
鬼っ!!!!
この後、「話せるチャンスがあってよかったね♪次に話せる機会もちゃっかり作っちゃって、アヤたんってば抜かりないんだから♪」とか執務室に帰る時にヒュウガに茶化されてればいいと思う。
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