ハルセVer
会議というものはいつだって億劫なもの。
ついウトウトと船を漕いでしまうのだって仕方がない。
解決策のない会議を続けていても時間の無駄というものだ。
そんな会議が嫌で嫌で嫌で仕方がない私は癒しを見つけた。
「マイスウィートキューティーボーイ!!」
おさげの中佐、通称おさげ中佐(仮)に私は抱きつくなり持ち上げてクルリと一回転した。
会議が始まる前なのでまだ人が疎らなのにも関わらず、会議室にいる人の視線はその私の奇行により絶賛独り占めだ。
因みに(仮)なのは本人がそう呼ぶのを心底嫌がっているからである。
「相変わらずうるさいよ。」
「クロユリ中佐も相変わらず言葉がストレートですね!」
そういうところも好きです。と更に抱きしめる腕に力を込めれば、中佐は満更でもなさそうな表情を浮かべながらも「ホント馬鹿、馬鹿だよ、馬鹿」と憎まれ口を叩いた。
そんな可愛らしい中佐に頬ずりをしていると、「こんにちは」と頭上から声が降り注いだ。
「ここここんにちは!」
声の主は言わずと知れた中佐のベグライターであるハルセさんだ。
好青年である彼の笑みは今日も晴れ渡った空よりも爽やかである。
私は彼の笑みに頬を染め、それを隠すようにクロユリ中佐を緩慢な動きで床へと下ろした。
その途中で中佐から「早く付き合っちゃえばいいのに」と私に聞こえるくらいの小声でおませさんな言葉が飛び出してきたが、必殺技であるスルーを発動しておいた。
乙女心はそんな簡単なものではないのだ。
好きだからこそ上手くしゃべることができなくなるし、妙に緊張してしまう。
実のところ私は、本命にはビビりで奥手なシャイガールなのである。
「ほら、会議始まるよ」
中佐の一声で私たちは各々の席に着いた。
会議が始まり、睡魔と闘いながら会議が終わるのを待つ。
そうしてようやく苦痛な会議が終わったと思えば、会議室に中佐がいなかった。
会議が終わるなり早々に出て行ったのだろう。
「おさげ中佐、じゃなかった、クロユリ中佐はどうしたんですか?」
椅子から立ち上がったばかりのハルセさんに聞くと、「少佐に連れられてどこかへ行かれましたよ。」との返答が帰って来た。
「そうですか…残念。」
せっかくもう一度抱きしめておこうと思ったのに。
「瑚夜さんは本当に中佐のことがお好きなんですね。」
「だって可愛いじゃないですか!たまに無邪気に笑うところとか、可愛くって。」
「好きなのは中佐だけですか?」
「へっ?!?!」
思わぬ彼からの発言に私は目を白黒させたのち、期待に胸を膨らませた。
これは、これは期待してもいいのだろうか。
今の言葉の含みに気付かない程私は鈍感じゃない。
「あっ、あのっ!クロユリ中佐は好きです!でも、その、ハルセさんはまた違った意味で好きです!!大好きです!」
会議室にて大きな声で告白。
中佐がいなくても会議室での私の奇行は健在だ。
それほど私の中ではいっぱいいっぱいだったのだ。
幸運なのは会議室にはもう私たち以外誰もいないということと、ハルセさんが嬉しそうに「私もです」と微笑んだことだろう。
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