カツラギVer





私には付き合ってまだ数か月の恋人がいる。

年上で大佐をしている彼は日々仕事が忙しそうで、休日でも会えないことがあるけれど、そんな忙しい彼とずっと顔を合わせていられる場所が、ここ、会議室だ。
大勢の人がいる室内ではあるが、私はそれでも彼と同じ空間にいることができることを素直に嬉しいと思っている。

私からは遠い席に座っているカツラギさんだけれど、そんな彼を少しでも目に焼き付けようと日頃は掛けない眼鏡をかけてレジメを見るふりをしながら彼を見る。
するとタイミングよく視線がぶつかった。

こうしてたまに目が合うのがすごく嬉しい。
真面目な顔をしているのに、私と視線が合うとふっと目が優しくなるその瞬間が好き。
と思っていると微かに微笑んでくれた。

頬が熱くなってきて、持っていたレジメで顔を隠すと、隣に座っていた上司から「顔赤いよ?具合悪い?」と心配されてしまった。
気にかけてくれるのはとても嬉しいけれど、今は何だか小っ恥ずかしい。

そんな照れくさい気持ちがバレないように「少し暑いだけなので。」と空調のせいにして誤魔化した。
上司はそうかな??と首を傾げはしたものの、体調が悪いわけではないならいいけど…と再度会議に集中する。
良かった、バレなかったと胸をなで下ろして私もまたカツラギさんを見た。
レジメに目を通していた彼が発言を求められ意見を述べるところを見つめながら、私は『今度の休みはどこか行きたいな。』と思った。
忙しいのがわかっているからあまりどこかへ出かけたいなどとは言わないけれど、言わない分、『出かけたいなー』『出かけたいなー』というこの祈りにも似た願望を念じてみる。


もちろん私にはそんなテレパシーが使えるわけもなく、会議が終わって少しだけ話す時間を作って来てくれた彼に「伝わった?」と聞けば案の定キョトンとさせてしまった。

そりゃそうだ、心の中で呟いた言葉なんて伝わるわけなんてない。
想いは口にしなくちゃいけないんだとわかってたんだけどね、と内心苦笑いしながら「なんでもないですよ。」と誤魔化してみたりして。

そんな私を知ってか知らずか、カツラギさんは「ああ、そうだ、会議中に思っていたんですけれどね。」と話題を変えた。


「今度の休みは2人でどこかへ行きませんか?」


この人は魔法使いか超能力者なのだろうか。



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