敵わない


いつもその隣には
自分よりも背が低く
太陽の日差しが当たればキラキラさせている髪に
赤いリボンがキュッと結ばれていて
制服からは日焼けなど知らない
白く華奢な手や足が見え隠れしている。
目があうと大きく少しつり上がった目が
ふにゃりと細め、ほんのり薄ピンクに塗られている唇が笑顔を作ってくれる。

「ーーーけんま??」

その、か細いけど、澄んだ声で
いつも僕の事を呼んでくれる大好きな声。

「あ、ごめん‥なんだった?」

「次のステージどうしてもクリアできないの‥」

「あーここね、僕も結構手こずった。」

いつもこうして昼休みの時
クラスの後ろの端の方で
机を合わせながらお弁当を食べながら
ゲームの話をしたり、部活の話をしたり
ゆっくりとした時間が流れる。

人見知りで大人数でワイワイしたりする事が苦手な僕たちは、ほぼ毎日この様に過ごしている。

「あ、そういえば今週の金曜日は体育館が点検で部活ないんだ。」

「じゃー‥‥一緒にいれる?」

「うん、いれるよ。」

「そっかー‥うれしいな。」

だいたい週に1日は休みがあったりするのだが、ここ最近新しい部員も加わり
練習や準備や後片付けなどを教えていたのでなかなか時間が取れなかった。

僕もそろそろ〇〇不足だったから
体育館が点検でリエーフ辺りは
えーーー!っと嘆いてたけど、
僕は心の中でやっと〇〇といれると思ってた事を思い出す。

「家でゆっくりしたいよね?それか研磨が行きたい所とかある?」

いつも部活部活で、あまり構ってあげれなかったのに、僕の事を気にして
提案してくれる彼女。

「僕の家にしよ。母さんが〇〇に会いたがってるし。」

「うん。わかった。私も研磨のお母さんにアップルパイ持ってくって約束したから調度よかった。」

「‥僕にはないの?」

「え?」

「アップルパイ。」

「ふふふ。勿論、研磨の分もあるよ。」

どうやら僕の知らないうちに
母さんとアップルパイを持っていく話になっていたらしい。
彼女は料理は得意で
僕も何度か食べさせてもらったけど
味が濃すぎず、薄すぎず
本当に美味しい。
特に好物のアップルパイは
毎回ペロリと食べちゃっている。
その好物のアップルパイを母さんにしかあげないの?と
少しだけ、ほんの少しだけ
身内なのに母さんに嫉妬した僕だけど


「研磨が好きなアップルパイだもん
研磨にはうんと美味しいの作るからね。」

ほら、彼女には僕は敵わない。





- 1 -

*前次#


ページ: