06



「さぁ、知ってることを話してもらおうか」

「さて、何からお話致しましょうか?」

サラが冗談めかして返せば、ふざけんじゃねぇと返され、睨めつけられる。

「お前は何者だ?」

「何者、とは?」

「あいつはこの部屋に入ってくる時、自分が殺されるかもしれないという恐怖を感じていた。なのにてめぇはそんな様子を見せることもなく総司と軽口を叩きやがった上に俺達に脅しまでかけやがった。それに、てめぇからは恐怖という感情ひとつ感じられない。俺達がお前を殺さないと確信してるんじゃねぇ。殺せないと解りきってる」

「……察しのいい男は嫌いじゃないですよ?」

あぁ、本当に不愉快なほど察しがいい。
土方の言った通り、彼らにサラは殺せない。サラは殺されないと理解している。
それはヴァンパイアに転生してからサラにとって唯一の絶対。たとえそれがヴォルトゥーリであろうと、殺されることなど有り得ないのだ。故にただの人間を恐れるなどあるわけが無い。

「端的に言ってしまえば、そうですね。わたしは人間ではありません。かと言って理性のない化物でもない。どちらかと言えば……不服ですが、そう、"彼ら"に近いでしょうね。まぁ死神のようなものと思っていただければ」

「何だって……?」

「死神だってよ」

「イカレてんのかあいつ?」

迂闊三人組から嘲笑混じりの怪訝な声が漏れる。
カーライルのように気が長く器が大きい訳では無いサラの堪忍袋の緒は簡単に切れた。

拘束されている腕を軽く動かせば、簡単に縄は引きちぎれる。
サラは自由になった体で永倉の首を掴み上げた。一瞬の出来事に警戒していたはずの幹部達はサラの動きに付いてこれず、一拍置き、サラを殺そうと刀を抜いた。

右、左、上、右、右、左。
サラは永倉を解放してから止まって見えるほど鈍い動きを躱して攻撃が止むのを待った。
疲労で動きが鈍くなるなんてことはヴァンパイアのサラには有り得ないので、必然的に彼らの方が息が上がるのが早く。

「不便なものね、人間って」

「てめぇ、今の動き……人間か?」

「言ったでしょう?死神とでも思っていただければって。それにわたし自身、侮辱されなければ貴方達に危害を加える気は無いの」

ちらりと、三人組を見遣れば手加減無しで首を掴んでしまった永倉はまだ咳き込んでいて、首元にはくっきりと痣がついていた。
他の二人は先ほどの発言に思い当たったのか苦々しい表情を浮かべている。

「誰だって侮辱されば怒るでしょう。それと同じですよ。あなた方に真実を話したところで信用も信頼もしない。それどころかあなた方を殺さなくてはいけなくなるなら、都合のいい表面上の話をするしかない。この判断は間違っているかしら、ねえ?鬼の副長様」

新選組の為に身を削り、心身共に最期の最後まで戦いの中に身を投じた彼を見ながら聞けば、彼は小さく舌打ちをすると吐き出すように言った。

「危害を加える気は無いと言ったな。目的はなんだ」

「貴方方の行く末を見届けること」

「あ?」

「誠を掲げた貴方方の結末を、わたしは知っている。だからその後、貴方達の命をもらいに来たの」

「未来を知っているということか」

「ええ」

「命をもらうというのは?」

「人としての死を迎えた後、わたしは貴方達の内、数名を仲間として迎え入れたいと思っているわ」

「仲間としてって、死神になるってことか?」

「当たらずとも遠からず、と言ったところですかね?」

「その数名ってのは誰のことだ」

サラは順に指を指す。
まずは土方、次に斎藤、そして原田。
沖田や藤堂も考えたが、サラの好みじゃない。食べたいと思うがそれはあくまで吸血鬼としての食欲の範疇。
サラが選んだ三人はサラ自身が"欲しい"と思った人間。

「勿論、拒否権も存在しますよ?わたしだってそこまで無理にとは言いませんし。時が来るまで此処に置いていただけるならわたしも貴方方に力を貸します」

「………………」

「頭のいい副長様、それに総長様にはわたしの有用性、ご理解頂けますよね?」

人ならざる存在は確かに脅威。だけどそれを上手く利用出来れば、羅刹以上に役立つ。死にもしない、殺せもしない、そんな化物が味方につくなら、この新選組のことを一番に考えるこの二人なら、間違いなく。

藤堂や永倉に羅刹の研究を反対されてもやめないと判断を下した彼らなら。
そして、サラの予想通り土方と山南はゆっくりと口を開いた。