コスチューム披露!
被服控除。
個性届、身体情報に、必要ならば要望を添付して提出することで、個性と要望に沿った、自分だけのコスチュームが作ってもらえる。なんと素晴らしい制度だろう。だが、しかし。
どうしてこうなった。
私は確か「動きやすい道着風にして欲しい」と書いた要望書を添付したはずだった。道着、まぁ、和服?うん、道着=和服となるその思考回路、分からなくはない。だが、しかし。
どうしてこうなった。
絵を描くのが苦手な上に、デザインのセンス皆無なため、要望書には「道着風」「動きやすい」「ジャンプ後の着地の衝撃を和らげる靴」など、箇条書きで出していたのがいけなかったのだろうか。だが、しかし。
どうしてこうなった。
着てみた姿を更衣室の鏡に写して考え込む。簡単に言えば、上半分は着物。下半分はミニ丈スパッツ、そしてこれから履くロングブーツ。え、何この取り合わせ?大丈夫?
確かに袖幅は肘までだし、袖丈も短めで動きやすい。だけど、これはもう、道着じゃ…ないよね?
「わー!八百万さんのコスチューム…なんか……こう、すごいね!!」
聞こえて来た麗日さんの言葉に、声のする方を振り返ると、八百万さんがとんでもなく過激な姿で立っていた。
「いえ、私の個性の性質上、本当はもっと露わにして欲しかったのですが、こればかりはしかたありませんね」
あれでもまだ露出し足りないと!?
八百万さんの衝撃発言に言葉を失い、着替えも半ばに立ち尽くしてしまう。
「羽生?着替えまだ?もうみんな行っちゃうよ?」
耳朶のイヤホンコードをクルクルと指に絡ませながら、とっくに着替えを終えた耳郎さんが声をかけてくれる。
「あ、ごめん、まだあとブーツとか、履くから…みんな先に行ってていいよ」
「そう?じゃあ、行ってるよ」
「うん、すぐ行く」
そう行って歩いていく耳郎さんのコスチュームは、言い方が悪いかもしれないけれど、いたって普通だった。むしろ普通にパンクでかっこいい。私も普通に道着でかっこよく決めたかったのに…
「着物風かわいー」「遅れないようにねー」などと皆が思い思いに声をかけてくれながら更衣室を出ていく。みんな優しい。
クラスの女子が全員出て行ったところで、改めて着替えを再開する。ブーツを履き、頭には幅広のコスチューム用ヘアバンドを巻いて、もう一度鏡に映る姿を確認する。
着物とはいえ、袖丈などは問題なく動きやすいし、下がスパッツであることで跳躍もしやすいだろう。ロングブーツは見た目に反して柔らかいし、ソールにはちゃんと衝撃吸収機能があるようだ。頭を覆うヘアバンドも幅広で要望通り。
自分がなんとなく想像していた道着風コスチュームとは180度違う仕上がりになってしまったために着ることに戸惑いと羞恥が伴うが、八百万さんのあの姿とあの言葉を思い返すと、恥ずかしがっていることが馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
意を決して更衣室の扉を開けた。
「あ、」
「ん?」
ほとんど同時に、すぐ隣にある男子更衣室の扉も開いて、中から出て来た人と鉢合わせる。見上げた顔には、うさぎの耳のようなものがついた目出し帽、緑色のジャンプスーツに、なんとも独特なマスクを着けた誰か。一見すると誰なのかわからない。
「うぁ、ああああ、羽生……さん、あの、あ、」
「え、と…?うーん、誰?」
「あ、僕、緑谷、だよ!後ろの席の!」
ワタワタと慌てたように答えてくれた声は、言われてみれば確かに緑谷のものだ。
「ああ、緑谷くんか!ごめんね、マスクしてるし、誰だかわかんなくて」
「そそ、そうだよね!マスクだもんね!大丈夫、だよ!」
「あ、ちょっと遅れ気味だし、急ごうか…」
「そうだね!!!」
そうして二人、小走りで演習場へ向かう。少し前を行く緑谷の頭には、ピンと立ったうさぎの耳のような何か。
「あの、緑谷くん…」
「え?」
「あの、ごめん気になって…マスク、なんでうさぎの耳なの?」
「……え?」
我慢できずに走りながらに尋ねると、走りながら、何を聞かれているのかわからないと言うように言葉が途切れる。そしてすぐに慌てたように大きな声を出した。
「いや!違うんだこれは!!うさぎの耳なわけじゃなくて!これは、その…あの……ォ、オールマイトの髪型をイメージして……」
後半、ブツブツと恥ずかしそうに声音のボリュームを下げながら、教えてくれる。
なるほど確かにオールマイトのピンと立った前髪は確かにチャームポイントだし、そう言われて見ると、緑谷の口元のマスクもニッカリと笑ったオールマイトなら大きな口のように見えなくもない。
なんだ、うさぎじゃないのか。
「そっか、憧れのヒーローだもんね」
「……!うん!」
「カッコいいコスチュームだね!」
「……!あ、ありがとう…あ、羽生さんも、その、……」
コスチューム素敵だね、
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