中学3年生の春、進路を決めるために進路希望のプリントが全員に配られた。
どこの高校へ行こうか悩んでいる者もいれば、既に決めていて迷いなくその場で書く者もいた。
私は前者だった。その日の授業時間では結局決められず、気づけば放課後になっていた。
教室に1人で残り進路希望のプリントとにらめっこをしていた。
(やっぱり第一希望はここかな…)
悩んだ末に決めた第一希望。プリントに記入し始めたと同時に隣の教室から大きな爆発音が聞こえた。
『ひっ!!?』
爆発音に驚き肩が跳ね上がった。
誰かの叫ぶような怒鳴り声が聞こえ、私は恐る恐る隣の教室を覗いた。
教室の中には数人の生徒が窓際に集まっていた。
1人は緑のもじゃもじゃした髪の男の子、もう1人はシャンパンゴールド色の髪をした男の子。
「雄英受けるな、ナードくん」
その人を目にして私はすぐに自分の教室に戻り扉に隠れた。
シャンパンゴールドの男の子は、何人かの生徒を後ろに連れて教室の前を通り過ぎていく。
完全に通り過ぎたのを確認してから私は大きく息を吐いた。
『あの人も雄英志望…って言ってたんだっけ…』
爆豪勝己。
この学校にいて彼を知らない人はおそらくいない程の有名人。
個性も派手で強い。まさにヒーローになるための個性と言っても過言ではないくらいだ。
けれど態度が大きく威圧的で、私が最も苦手なタイプの人間で一番関わりたくない人でもあった。
そんな彼が雄英を志望していることは隣のクラスである私のクラスにも知れ渡っていた。
私は机の上に置いた進路希望のプリントを手にした。
『どうしよう…雄英…』
第一希望に書いたのは″雄英高校 サポート科″だった。
以前彼が「この学校で雄英唯一の合格者になる」と叫んでいたのを聞いたことがある。
学科は違えどもし受かったとすれば、きっと彼の耳にも入るだろう。
そしたら何を言われるか想像するだけでも体が震える。
『はぁ…困ったなぁ…』
季節はまだ春。
この時の私はまだ知らない。1年後の春、私の人生が大きく動き出すことを―