04_2人で生きるために

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目が覚めると一番に映りこんできたのは真っ白な天井だった。
錘が乗っているかのように体は重い。
右腕には包帯が巻かれ、少し痛みはあるけれどちゃんと動く。
左腕は固定されており上手く動かず、少し動かすだけで右腕とは比べ物にならないほどの痛みが走る。

独特なにおいと雰囲気。
ここは病院だとすぐにわかった。

(そっか…あのあと気絶しちゃったんだ…。爆豪くんはどうなったんだろ…)

体をなんとか動かそうとしたとき、病室の扉が開いた。

「…!目、覚めたンか」

やってきたのは爆豪くんだった。
中に足を踏み入れ扉を閉めると、ゆっくりと私のベッドまで近づいてきた。
手には花を生けた花瓶を持っており、ベッドの隣にあるスペースに花瓶を置いた。

『あ…あの…爆豪くん…怪我は…?』
「あ"?ねェよンなもん。お前だけが怪我したンだろうが」
『そ…そっか…』

爆豪くんはベッドの脇に置いてあった丸椅子に腰をおろした。
気を失ってからのことを聞きたかったが、爆豪くんがイライラしているように見え、怖くて口を開くことができなかった。
どちらも口を開くことがなく、廊下からの物音が聞こえるくらい病室は静かだった。

「…腕、痛むンか」

先に口を開いたのは爆豪くんだった。
そっと手を伸ばし、包帯の巻かれた右腕を軽く触った。
ピリっと電気が走るような痛みがあったが私は我慢して「少し」とだけ答えた。

「…何であんなことした」
『……』
「お前のもうひとつの個性…あのとき俺の受けた攻撃は全部お前にいってたんだろ」

さすがに気づかれてしまった。
爆豪くんには痛みもないまま一瞬で傷が治ると“嘘”を言った。
本当は触れた相手の部分と自分の同じ部分を一時的に交換する、という個性だ。
爆豪君が腕に受けた爆破の攻撃は私にやってくる。
反対に私が腕に攻撃を受けていれば、その攻撃は爆豪くんにいく。

『あれが…い、一番…いい方法だと思ったから…です』
「あ"ぁ″?」

爆豪くんの視線が怖くて目を合わすことができない。

『ふ、2人で…生きて逃げるためにはあの方法しか思いつかなくて…』
「!」
『私は臆病で…戦える個性も持ってなくて…でも、誰かを見捨てて1人で逃げるなんてできなかった…』

あのときの決断は私にとって今までで一番大きな決断だったと思う。
上手くいくかどうかは爆豪くん任せになってしまったけれど、私にできることは爆豪くんの怪我を引き受けることだけしかなかった。
きっと私があの案を出さなければ爆豪くんは私を逃すために突っ込んでいっただろう。

爆豪くんは一度ため息のような息を吐くと立ち上がった。
包帯の巻かれていない手の甲に自分の手を重ねると、目を合わせなかった私の顔を覗き込むように近づけた。

「…助かった。お前の個性がなかったら俺はたぶん…ここにはいなかったかもしれねェ」
『ば…爆豪…くん…』
「でももう二度とあんな真似すんじゃねェ。…死なれたら後味わりぃ」

手を離し、先生を呼んでくると病室を出ていった。
少しだけ近づいたときの爆豪くんの顔は、イライラしているようにも見えたけれど、少しだけ悲しい顔をしているようにも見えた。



少しして私を担当してくれている医師と、あの場にいた相澤先生が病室に入ってきた。

「ひとまずリカバリーガールに右腕の処置だけはしてもらったから、右腕は動くとは思うけど無理は厳禁だからね」
『はい…』
「君の体力のことを考えて右だけの処置だから、左は少しずつ治療をしていくことになる」

医師から今の私の怪我の状況を説明され、少し時間はかかるが左腕も動くようになるそうだ。
ただ少し指先が動かしにくいといった後遺症が残るかもしれないらしい。
説明を終え、医師が病室をでたあと後ろに立っていた相澤先生が近づいてきた。

「大体の話は爆豪から聞いた。無茶をしたそうだな」
『す…すみません。ご迷惑をおかけしてしまって…』
「…俺もプロヒーローとして責任がある。守ってやれなくてすまなかった」

相澤先生の手が私の頭をぽんぽん、と2回優しくたたいた。
気が緩んでしまったのか、安心したからか目には涙が溢れて頬を伝って零れ落ちた。
あの時の状況を思い出すと手が震える。

私はしばらく涙が止まらなかった。