***
神治が腕に攻撃を一瞬で治るという個性をかけてから少しだけ腕に違和感があった。
肌の感覚といえばいいのか、まるで自分の腕じゃないような感じがした。
けれど今はそんなことを気にしている暇はない。
目の前の敵を倒さなければ意味がない。
煙が完全に消える前に敵に近づき、攻撃をしかけなければいけない。
(くっそ視界わりィ…!?)
前方から敵の手が突如伸びてきて腕にかすりそうになった。
「避けたか。ガキのくせにすばしっこいな」
煙が消え敵の姿がはっきりと見えた。
相変わらず敵は背を出入口に向けたままだった。
相手に触れられさえしなければ個性は発動しない。
だが素早い動きにすべての攻撃をかわしながら近づくことは不可能に近い。
一瞬、あいつの視界を遮ることができればいい。
消えていく煙に紛れ敵との間をつめた。
(いける!)
右手の籠手に手をかけようとしたとき、全ての動きを見透かされていたかのように敵の手が伸びてきて左腕を掴んだ。
すぐに振り払おうとしたが敵の素早さに敵わず大きく爆発した。
『…っ…?』
痛い
そう思ったが爆発させられた腕に痛みは無い。
それどころか怪我ひとつしていない。
神治のいっていた個性のおかげだろうか。
怯んでいる暇はない。
爆発のおかげでふたたび煙がただよい姿を隠してくれる。
敵の背後をとり背中に籠手をつきつけピンに手をかけた。
「そうはさせない」
「なっ…くそがっ!!」
ピンをはずす直前、敵の手が俺の右腕を掴んだ。
俺が起こした爆発と、敵のおこした爆発がほぼ同時に起こった。
爆風で後ろへ吹っ飛ばされたがなんとか受け身はとることができた。
爆破された右腕も籠手は破壊されたものの神治の個性のおかげで無傷だった。
「すげェな…あの爆発耐えるとか」
戦っている最中にあった違和感はいつの間にか消えていた。
煙の先では敵が気絶して倒れていた。
さすがにゼロ距離での攻撃には耐えられなかったようだ。
「おい。終わったぞ。出てこい」
物陰に隠れている神治に向かって声をかけた。
だが返事は返ってこない。
ビビって声がでないのだろうか。
「…ったく。さっさと他のやつらのとこに…」
神治が隠れている場所まで足をすすめ、瓦礫の陰を覗き込んだ。
「神治…?」
そこに座り込んでいるはずだった神治はぐったりと倒れていた。
慌ててかけよると息が荒く、大量に汗をかいていた。
それだけではない。神治の両腕は酷い火傷を負っていた。
『うっ……』
「おい!しっかりしろ!!…どうなってんだ……」
その腕の火傷の箇所を見て何か嫌な予感が頭をよぎった。
けれども今はそんなことを考えている場合ではない。
早くこいつを病院に連れて行かなければ。
神治を抱きかかえ、俺は出口を目指した。