午後の授業が終わり、クラスメイトは帰る準備を始めた。
このまま工房へ行く人が多いけれど私は急いで鞄に教科書を詰めて教室を出た。
サポート科の下駄箱に着くと、そこには爆豪くんがポケットに手をつっこんで立っていた。
『ご、ごめんね。待たせちゃって』
「いや、待ってねェけど」
右肩にかけていた鞄を一度おろし、貸していた電子辞書を受け取った。
左手が動かせない分、すべて右手でしなければいけないのが不便だ。
鞄のチャックを閉めると、私の手から離れ鞄が持ち上がった。
『え?ば、爆豪くん?』
「帰るんだろ。持ってやる」
『い、いやさすがにそれは悪いよ!』
「行くぞ」
人の話を聞かないまま爆豪くんは自分の鞄を背中に背負い、私の鞄を右肩にかけて歩き始めた。
私も置いて行かれないように後を追った。
お昼ご飯のときも思ったけれど、爆豪くんと横に並んで歩いていることになるなんて思いもしなかった。
妙にドキドキしている。
私の歩幅に合わせてゆっくり隣を歩く爆豪くん。
今日だけで私が思っていた彼と違うところを沢山知った。
「ンだよ。さっきから人の顔ジロジロと見やがって」
『え、いや…別に…。爆豪くんて優しい人なんだなぁって』
「はっ…?!俺はいつでも優しいわボケ!」
『ごごご、ごめん!』
怒ったと思い反射的に謝った。
爆豪くんはすぐに顔を逸らし少しだけ歩くスピードを速め私の前に出た。
一瞬見えたその顔は少し赤くなっていて、照れているように見えた気がした。
今日は本当に新しい爆豪くんを知れる日になった。
そのあと家の近くまで送ってくれ、持ってもらっていた荷物を受け取りお礼を言うと、爆豪くんは「別に」と言うと来た道を引き返して行った。
爆豪くんの姿が見えなくなってから家の中に入り、私は自分の部屋に一直線に向かうとベッドへ仰向けで倒れ込んだ。
『今日は疲れたー…でもなんか気分はいいんだよなぁ…なんでだろ』
心臓がまだドキドキしている。
不安や恐怖のようなドキドキではない。
少し心地よいドキドキだった。
*
翌日、カーテンの隙間から日差しが差し込み、アラームが鳴るより先に目が覚めた。
固定された左手の指先に力を込めると、少しだけ動くようになっていた。
私の個性は自分自身に使えないが、自己治癒力は高いらしい。
それでもまだ動かない腕を固定したまま、朝食をとり制服に着替えた。
いつもはリュックサックで通っていたが、左腕が使えないめ背負えず斜めがけの鞄に教科書を詰め替えた。
いつもの家を出る時間よりだいぶ早いが、私は鞄をかけ家を出た。
『…え?』
「よォ」
家を出てすぐ目に入ったのは、ポケットに手をつっこんで立っていた爆豪くんだった。
『な、なんでここに…?』
「あ"?荷物持ちにだろが。…てリュックじゃねェンかよ」
『荷物持ちって…そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫だよ!ほんとに気にしないで!』
「……ンだよ」
『え?』
小さな声で呟くように言った言葉はうまく聞き取れなかったが、
「行くぞ」と言われ私は隣を歩いた。
今日も私の歩くペースに合わせて歩いてくれている。
「あれ?爆豪じゃん!」
学校の近くまできたとき、後ろから赤髪の雄英の制服を着た男の子が声をかけてきた。
以前、ヒーロー科の授業で見たことのある顔だった。
「…って爆豪!お前女の子と登校って…もしかして彼女か!?」
『えっ…か、彼女!?』
「ち、ちげーわボケ!こないだ怪我させたって話しただろうが」
彼女と言われ焦ったように爆豪くんはすぐに言い返した。
その顔は赤くなっているように見えた。
ヒーロー科のクラスメイトと思われる彼は、思い出したように手を叩くと私の顔をみたあと何故だか爆豪くんに向かってニヤッと笑いかけていた。
「俺、爆豪のクラスメイトの切島鋭児郎ッス」
『はじめまして。私はサポート科の神治…』
「癒月?」
自己紹介をしていたとき、切島くんの少し後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声は聞き覚えのある声で、懐かしい声だった。
軽く下げていた頭をあげると切島くんの後ろに見えたのは、黄色に黒い稲妻の形のはいった髪をした男の子―
『…電気?』