2024年。
風向きが変わった。
誰もが薄々感じていたことに、ようやく社会が名前をつけた年だった。

報道で連日取り上げられるその名に、
私はただ一人の「被害者」でもあり、一人の「加害者側」とも見なされかねない立場だった。
沈黙も、言葉も、どちらも武器であり、毒だった。

でも私は、名誉の回復を望んでいる。
私だけのものではない――かつて、憧れていたすべての人たちの、名誉を。
光の中で踊っていたあの人たちの、存在の意味を。

だから裁判を起こした。
自分のためであり、誰かのためであり、そして未来のためだった。

「……表舞台から、しばらく離れようと思う」

スタッフルームでそう言ったとき、一瞬、空気が止まった。
でも私は、恐れてなんかいなかった。
決めたことだった。

レ・ミゼラブルのエポニーヌ役。
改装前、最後の帝国劇場。その千秋楽が、私のフェアウェル公演になる。
あの劇場に立つのは、これが最後になるかもしれない。

あんなに夢だったのに。
何度も何度も舞台袖から見上げた、帝劇の0番。
それでも、降りることを決めた。

「わかんないけど、やってみるよ」
言い訳にも、覚悟にもならないその言葉を残して。

夜の劇場は、異様なほど静かだった。
打ち上げを終えたスタッフたちが去ったあと、最後に舞台の床を一人で撫でる。

ここに、すべてを置いていく。

でも、それは逃げじゃない。
この世界を守るために、私は一度、戦場を変えるだけだ。

「ジャニーズ・エンタテイメントを死なせない。絶対に」

心の奥で、誰にも届かなくてもいいと願いながら、私はそう誓った。

誰かが、後ろから言った。

「この人こそ、エンターテイナーだな」

名もなき照明スタッフの声。
だけどそれは、どんな称号よりも、今の私にふさわしかった。

ずっと一緒にいて。
誰もいなくなって、何も求められなくなるその日まで。

本当の終わりがいつになるか分からないけど、
それまでは――
どうにかこの世界で、まだ戦っていこうと思う。