バイト先の古着屋に出勤すると、店長が電子タバコを咥えながら私に何か紙を差し出した。
「これ、お客さんから」
「え?ラブレター?」
「そう」
「は、マジなやつ?」
「誰にも言うなよ、相手一般人じゃないから」
「ええ、怖」
お前SNSとか上げんじゃないよ、と言い残してどこかへ去っていった。
雑多に文具がまとめられた引き出しからハサミを見つけ、綺麗に糊付けされた手紙を丁寧に開ける。
ふわっとマスク越しにもいい匂いがした。男性物の香水?気障なことをする人。
「突然このような手紙を渡してごめんなさい。きっと困惑していることでしょう。
こないだ見かけた時の、白いフリルのビスチェの着こなしが可愛くて。
気持ち悪がられることを承知でこんな手紙を書いて、こうして店主さんに渡してしまいました。
いつもこのお店に来るとあなたを探してしまいます。
ある時の猫のニットが素敵でした。同じのを着たい。
デニムも似合いますよね。カチューシャと合わせていた日が特に好きです。
服飾の学生さんだとお聞きしました。僕なんかがこんなことを言う資格は無いかもしれませんが、とても素敵なセンスをお持ちだと思います。
こんな僕ですが、もし許してくださるなら、どうか1度お話し出来る機会を与えてはいただけないでしょうか。
そうだ、最近[アニメのタイトル]を最終回まで見たんです。お好きだと聞きました。今すごく語りたいんです。
差し支えなければ、店主さんにお願いしてお会いする席を設けたいと思っています。
どうか気味悪がらず、嬉しいお返事を期待しています。」
あ、あの人。
結びの名前に見覚えがある。
一般人も何も、スターだ。
有名な人だ。
店長が中でも特に大事にしているお客さん。
からかわれているんだろうか。
でも、あの方が私にお手紙を下さった
私に、お手紙を?
せわしなく心臓が動き出す。
世界はこんなに色鮮やかで、こんなに豊かな音に満ち溢れているとは!
今日はなんていい日なんだろう。
信じられないくらいとても幸せ
憧れのあの方に愛されるなんて
世界中で一番私は幸せ
夢に見たあの方に愛されるなんて
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