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隣人は近界民ネイバー


 隣に越してきたのは、

「どうも、はじめまして」

 低い背と幼い顔立ちをした少年で、

「どこにでもいる、すごく日本人ニホンジンです」

 自己紹介とは違って珍しい白髪であったし、瞳は夕暮れの色をしていた。
 わずかばかり拙さの残る口調に合わさった丁寧な言葉遣い。ぺこりと音がしそうなほどの軽やかさでされたお辞儀。制服は近くにある市立中学校のもので、なるほど見覚えがあった。
「隣に引っ越してきました。よろしくオネガイシマス」
「……はい、よろしくお願いします」
 表情筋を総動員して作るのは笑顔だ。
 浮かべた笑みは引き攣っていないだろうか、不安に思いつつ同じように挨拶を返す。

 あくまでも普通の人間、
 あくまでも良き隣人。

 当然である。相手は同じ人間で、しかも見た目だけなら完全に年下だ。人見知りでもない限りありふれたご近所付き合いができるはずだろう。しかしながら佐藤世里の心はただひとつ。

(君みたいな日本人がいてたまるか……!)

 たった一言、五秒にも満たないこの一言に尽きた。




汝の隣人を愛せよ、惜しむことなかれ

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宵、泳ぐ鳥