僕は、愛に殺されるのだ。

呪骸だという喋るパンダさんと棘さんに着いてって意識が落ちたメグミくんを硝子さんに診てもらいつつ、空いている椅子を使っていいと言われるままにみっつ用意する。ひとつはパンダさんのそばに置き、残りふたつは横に並べて棘さんと並んで座る。パンダさんに自己紹介をしかけると真希さんと知らん女の子が来はった。

「あれ、真希さんやん。お久しぶりです」
「琴葉か。……おまえ、相変わらずだな」

棘さんにぴったりくっついている様をみて呆れているらしい。真希さんはため息をつきはった。人の顔みてため息なんて真希さんひどい。知らん女の子もちょっと顔を引きつらせて「誰?」と真希さんに聞いてはる。

「こいつは京都校1年の琴葉だ」
「阿部琴葉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。さっきはうちの先輩方が失礼しました」

霞先輩から止めるように言われとったのに手遅れやったうちにも落ち度があるし、ひとまず頭を下げておく。ちらっと棘さんに目を向けると、改めてパンダさんたちの紹介をしてくれた。

「ツナツナ、いくら、こんぶ」
「え、ほんま?釘崎さん同い年なん?仲よくしましょ!」

はじめて会う同い年の女の子にちょっとテンション上がって近づくと、ちらっと真希さんをみてから「別にいいけど…」って渋々と頷いてくれた。オシャレさんやし、桃先輩と仲良くなりそう!……あ、でも桃先輩ふつーに東京校に敵対するし無理やな。

「こいつはメンドーな京都でもまだマシなやつ」
「マシって真希さんひどい〜、もっとええ言い方あるやないですか〜」
「おまえ棘にしか興味ないじゃねーか」
「え〜、真希さんうちのことそんな風に思ってたんですか?全然そんなことないですよぉー。棘さんがすきな人には興味あるんで、真希さんも、東京校の人たちもすきですよっ」
「あっそ」
「え〜真希さんが冷たい〜」

相変わらずの塩対応っぷりに棘さんの元へ戻ると頭をぽんぽんされた。うー、棘さんすきっ!そんなやりとりを見てたらしいパンダさんに「なにおまえらつき合ってんの?」と聞かれた。興味津々ってかんじの顔をしてはる。パンダの呪骸侮れへんな。感情死んでる人間よりよっぽど人間らしい。

「すじこ」
「え、マジかよ。やっぱ歴史ある家は違うな〜」

しかも棘さんとの意思疎通も完璧。よっぽど凄い術師が作らはってんなーって思ったけど、よぉ考えたら夜蛾学長は傀儡操術で有名やった気がする。反対に釘崎さんは「は?狗巻先輩なんて言ったんですか?」って真希さんに聞いていて、真希さんは「あいつら許嫁だよ」と答えていた。

「ハァ?許嫁ぇ〜??」
「そう。うちら子どもの頃から将来結婚することが決まってるんです。ね、棘さん」
「しゃけ」

うちの自慢の棘さん。だいすきな棘さん。はじめはお家のことがきっかけやったとしても、すきになってしまったもんはしゃあない。それはお互いの呪いの効果もあったかもしらんけど、まだコントロールも侭ならんかったこどもが一回かけた呪いなんて、たとえ呪力がなんぼ強かったとしてもそう何年も続けへんはず。やから、うちらお互いをすきになるために生まれてきたんよね、棘さん。特に声に出したわけでも、喋ろうと念じたわけでもないけど、棘さんにはうちの気持ちは全部お見通しで、やさしく微笑って撫ぜてくれる頬がこしょばい。

「やってらんないわ…」

呆れたとばかりに吐き捨てる釘崎さんの声が聞こえた。

(20210528)

title by toad


High Five!