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映像はヒーローチーム側の視点で、蛙吹さんと常闇くん、葉隠さんがビルの中へと入ったところを映していた。葉隠さんは“個性”を最大限活かすためか、コスチュームを全て脱ぎ捨てている。葉隠さんの“個性”なら、気配を消して敵へと近付き拘束することができるし、他のヒーローが気を引いている間に核の保護ができるだろう。
植物によって使える通路はかなり狭まれているようだった。蛙吹さんと常闇くんが注意を払って慎重に動いているのが見て取れる。
画面が切り替わり、敵側の映像に切り替わった。ちょうど四階から三階へと降りた階段の下で、卯依ちゃんと切島くんが二手に分かれたところだった。
「?」
切島くんはそのままフロアを進んでいき、卯依ちゃんはしばらくその場にとどまったあとに壁に手を添えた。“個性”を使用したようで、植物が生き物のように蠢いたあと、壁だった場所に道が現れる。卯依ちゃんが訓練開始前に塞いでいたのだろう。卯依ちゃんはその道を通り過ぎると、再び植物でその穴を塞いだ。カメラが切り替わり、卯依ちゃんを正面から撮る映像に切り替わる。
「“個性”は植物の操作?」
「うん、それもあるけど……」
超能力のことを話していいのか悩んでいると、映像の中の卯依ちゃんが突然肩のあたりの空間を掴み、勢いよく壁に向かって手をついた。……いや、壁と手は数センチ間が開いているようにも見える。なにがなんだか分からずに動揺していると、卯依ちゃんはそのままポケットからテープを取り出し、自分と壁の間で手を動かし始めた。
「……もしかして、葉隠さん?」
卯依ちゃんはテープを巻き終えると耳に手を当てた。無線で連絡をしているようだ。―――そうか、生体探知。初対面のときにそんなことを言っていた。見えない葉隠さんの位置が卯依ちゃんには分かるのかもしれない。ノートに走り書きした僕に、お母さんは困惑したようだった。卯依ちゃんは葉隠さんを床に座らせた後、自分のジャケットを渡してからその場を去っていった。すぐに植物が蠢いてカメラを覆い隠し、彼女の姿が見えなくなる。次に映ったのは、二階で切島くんと蛙水さん達が戦闘している映像だった。
▲ ▽
訓練が開始されビルに入ると、第二戦目で見た建物とはまるで別の内装をしていた。壁や床は植物で覆い隠され、隙間から照明の光が覗いているだけ。黒影が暴走をする程の暗さではないが、あまりにも異様な光景に隣に居た蛙吹と顔を見合わせる。
「これは卯依ちゃんの“個性”ね」
実操か、と呟き足を踏み出す。どうやら建物の見取り図は役に立ちそうがない。通れるはずの道は植物によって閉ざされていた。一階を抜けて二階へと繋がる階段を進む。その途中に見かけた抜け穴をなんとかこじあけて、葉隠を先回りさせた。その数十秒後、無線で葉隠から実操に捕獲されたと報告が入った直後、俺たちは切島と遭遇し戦闘を開始した。
二対一、それと“個性”の相性からか、勝負はすぐについた。切島を床にうつ伏せの状態に倒し、蛙吹が腕を拘束している。もうすぐ葉隠を捕らえた実操がやってくるはずだ。ヤツの“個性”のことを考えると、早々にここを抜けて核のある場所に進んでしまいたい。次の作戦を考え、後ろの壁に背をついたとき、ふわりと甘い香りを鼻に吸い込んだ。―――花、
ひたり、と冷たい金属の感触が首に当てられる。それがなにかは見なくとも分かった。
「あ、蛙吹……」
「どうしたの常闇ちゃん」
唾を飲み込んで名を呼ぶと、切島の腕にテープを巻こうとしていた蛙吹が振り向いてこちらを見た。その瞬間に目を見開いて硬直する。俺の首に当てられているそれに気付いたのだろう。
「仲間に怪我をさせたくないのなら、切島から退いて」
「……分かったわ」
俺の後ろ、植物の壁を挟んだ奥から聞こえた指示に、蛙吹がゆっくりと立ち上がる。切島は訳が分からないように首を左右に振っていたが、体をひっくり返して俺を視界に入れると叫んだ。
「オイ実操!! 人質なんてズリィだろ!! 俺は正々堂々――」
「正々堂々戦う敵なんてこの世に居ない。さっさと捕獲証明テープをつけて。これは訓練で、今のあんたは敵」
切島はぐっと顔を食いしばり、蛙吹に謝ってからテープを巻きつけた。その瞬間にオールマイトの訓練終了のアナウンスがビル内に響き渡る。先に二人の捕獲が成されたら訓練は終了。実操が俺の首からナイフを退け、脱力しながら振り返る。
植物の壁から片腕だけがにょきりと生えていて、その手には鈍色に光るナイフが光る。実操は腕を引っ込めて“個性”を使用したのだろう、周辺の植物が急激な速度で枯れていく。廊下を埋め尽くしていた植物は最終的に塵になって空気に溶けた。訓練が開始して初めて見た実操の表情に、感情は無い。
「卯依ちゃん、気がつかなかったわ。悔しいけれど、さすがね」
「ありがと。私、葉隠と瀬呂を回収してくる」
訓練で勝ったというのに喜ぶ素振りも見せず、実操は通路を進んでいった。その後オールマイトの講評を聞いた後、実操は「仲間を餌にして、人質取るなんていかにも敵っぽいでしょ」と笑っていた。