視線の先の先
感情のまま前のめりになっていた自分に気付き、咳払いと共に姿勢を正す。思わず熱くなってしまった……。
黙り込んでしまった出久の視線から逃げるように顔を背けると、疲れきった様子のお茶子と目が合う。その奥には自身の手を見下ろして震える飯田の姿も。無事にゴールした二人に声をかけ、次々にやってくるクラスメイト達を見渡す。
予選通過の人数はどのくらいだろうか。これまでの雄英体育祭を知らないので競技も予想が出来ない。 “個性”使用有りのバトルが良いな。一対一のシンプルなやつ。そんなことを考えながらぼうっとしていると、競技終了を告げるミッドナイト先生の声が聞こえた。
モニターに第一種目の結果が映し出されていく。クラスメイトはともかく、見覚えのない生徒はB組の人達だろうか。途中で映し出された男の子に目を見張る。
―――27位、心操人使。
実技訓練を受けているヒーロー科の生徒より上位に入っている。B組の“個性”を把握していないから何とも言えないけれど……あの発言、虚勢じゃなかったんだな。
「……」
「卯依ちゃん、どうしたん?」
「いや、なんでもない」
予選通過は上位42名。第二種目としてモニターに映し出されたその文字に、思わず気の抜けた声が出る。
「は、騎馬戦?」
個人競技じゃないのか、と肩を落としているうちに説明が進んでいく。2〜4人のチームを自由に組み騎馬を作る。第一種目の順位ごとにポイントが振り当てられ、騎馬の合計ポイントが表示されたハチマキを騎手が装着。
制限時間は15分。
競技中、ハチマキを取られても騎馬が崩れても、失格にはならない。ただし、悪質な騎馬崩しは一発退場。
競技終了の合図が鳴った時点で、ポイントを多く所持しているチームが勝利。
42位が5ポイントで41位が10ポイント。ということは、私は2位だから205ポイント。いや、正直持ち点は関係ないな。大事なのは誰と組むか。
……誰と、組むか。
協力とか、チームプレイ……苦手なんだよね。初めの戦闘訓練を思い出してみても、あれを共闘とは言い難い。個々で好き勝手やる方がしょうに合ってる。でも騎馬は二人以上じゃないといけないし……。
「それじゃこれより15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
いやもううだうだ考えてる時間無い! 組むのなら、少しでも勝率をあげられるような相手を、
―――なら、“個性”の相性が良い
「お茶子」「卯依ちゃん!」
名前を呼ぶ言葉がかぶり、二人して目を丸める。二人で見つめ合い、恐る恐る口を開く。
「一緒に……」
「……組まない?」
数秒おいて、ぱあっと笑顔を浮かべるお茶子に小さく息をつく。お茶子が相手なら意思疎通も問題なく行える。先を越されなくてよかった。
「卯依ちゃんさえ良かったら、デクくんも誘わん?」
「出久?」
「うん、仲いい人とやった方が良いし!」
ちら、とお茶子の視線の先を見ると、やけに避けられている出久が居る。なんだあれ、人よけスプレーでもかけられたように孤立してる。お茶子についていき出久のもとへ向かう。途中で寄ってきたクラスメイト達が、行き先に居る出久に気付くと蜘蛛の子を散らしたように去っていった。