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「デクくん、組もわっ!」
お茶子が声をかけ、振り向いた出久は噴水のような涙を流していた。吃驚して後退る私に気付いた出久が、驚いて叫ぶようにいう。
「二人共、良いの!? 多分僕1000万故に超狙われるけど」
「ガン逃げされたらデクくん勝つじゃん」
その後も会話を続ける二人を眺める。……ん?
「1000万ってなに?」
「えっ」「えっ」
首を傾げる私に出久が戸惑ったように口を開く。どうやら第一種目一位だった出久は騎馬戦でのポイントが1000万与えられたようだ。上に行くものには更なる受難を、ということらしい。誰と組むかばかり考えていたからだろうか。
「ぜんっぜん、聞いてなかった」
「だから卯依ちゃん、難しい顔してたのかあ」
「じゃ、じゃあ、もしかして僕と組むの嫌になったり」
「いや、しないけど」
安堵の一息を吐く出久をじっと見つめる。
「良かった、実は僕も組みたいと思ってたんだ。チームを組むならなるべく意思疎通がスムーズに出来る人が望ましいもの!」
「あと一人、どうしよっか」
「実は、麗日さんの“個性”ともう一人で、ある策を考えてたんだ!」
出久が張り切った様子で体の向きを変え、歩き出す。その先に居た飯田の姿に「ああ」、と納得した。お茶子で浮かして飯田の機動力を生かす作戦か。このメンツならもしかして騎手、私か? 出久に続いて歩いていくお茶子の背を追う。
「なあ、アンタ」
▲ ▽
「飯田くんを先頭に、僕・麗日さんで馬をつくる! そんで麗日さんの“個性”で僕と飯田くんを軽くすれば機動性は抜群!」
「じゃあ卯依ちゃんが騎手だ!」
「うん! 卯依ちゃんの“個性”なら攻撃も牽制も出来る。この策なら、1000万ポイント保持したまま逃げきれる!」
麗日さんは「おお!」と感心したように拳を握ってくれた。けれど飯田くんの表情は固くて、名前を呼ぶより先に、飯田くんが口を開いた。
「さすがだ、緑谷くん……。だがすまない、断る」
飯田くんはそのまま背を向けて行ってしまう。その先には轟くん達が居た。
「俺は君に、挑戦する!」
もう、始まっていた。体育祭が始まる前の、卯依ちゃんの言葉が脳裏をよぎる。
自分以外、全員が敵。
―――友達ごっこじゃ、いられない!
「あれ、卯依ちゃんは?」
「えっ?」
麗日さんの戸惑った声に、僕も慌てて周囲を見渡す。てっきり後ろに居ると思っていたのに、卯依ちゃんの姿は無かった。
「あ、居た! あそこ!」
その指差す先には卯依ちゃんの後ろ姿があった。向かい合って居るのは、髪を逆立てた別クラスの生徒。
「あれって教室に来てた宣戦布告の人、だよね」
「うん……」
わけもわからず嫌な予感がして足を踏み出す。脱力している白い指先が、その華奢な後ろ姿が不安を煽って仕方がない。
「卯依ちゃん!」