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アラジンとほぼ同時刻に迷宮内に到着していたハルは懐かしい感覚に心を湧き立てる。兜に隠されたその表情の変化は誰にも分からないが、ハルは確かに、自分の気持ちが逸るのを感じた。

死と隣り合わせの道。命の駆け引き。生死を分ける決断。

「……アリババくん、遅いねえ」
「……そうですね」

二人の服が乾いた頃にアリババはやってきた。紆余曲折を経て最初の関門を抜けた三人は、力の使いすぎで倒れてしまったアラジンを抱えて洞窟の中へと身を隠した。ハルは外套をアラジンの下に敷いて立ち上がる。

「どうした?」
「剣を探しに行きます」
「え!? 迷宮の中にあんのか!?」
「剣を持っていた人間が、この迷宮に挑んで命を落とした可能性もあります」
「そりゃ可能性はゼロじゃないだろうけど……なにか手がかりでもあるのかよ」

アリババの言葉にハルは黙り込む。何もない。ハルには何もないのだ。

「ちょっと落ち着こうぜ。ずっと戦いっぱなしで、お前も疲れただろ」
「……いえ、その必要はありません。あなた方はここに居てください。先ほどの道を探してから、戻ってきますから」


ハルはそう言うと馬を連れて去っていった。表情が見えなくてもハルの顔が明るくないことぐらいは予想ができる。

―――きっとアイツも、なにか理由があるのだろう。ハルだけじゃない。アラジンだってそうだ。

でも、二人は自分のために迷宮に挑むと決めて戦ってくれた。それなら、俺は自分のことを喋っておくべきだ。

迷宮攻略はひとりじゃ出来ない。ハルが戻ってきたら、アラジンの目が覚めたら話そう。俺の過去を、迷宮攻略の目的も全て。そして聞くんだ。アラジンがジンの金属器を探す理由、ハルが必死になって剣を探す理由も―――


アリババがひとり決意を固めた頃、ハルは最初の関門である洞窟を一つずつ探し回っていた。骨となった挑戦者達の遺体の傍に落ちている剣を一つずつ見ていき、目的の物ではないと分かっては密かに肩を落とす。不正解の洞窟にある罠を軽々躱し、最後の洞窟にも剣が無いことが分かったハルは、ひとり呆然とその場に立ち尽くした。

アリババが言っていた言葉を思い出す。少しは落ち着けと、これまで何度言われてきただろう。剣を探すために国を出ると決めたときも、それを周りへ告げたときも。

―――思えば一度も人の言葉に耳を傾けてこなかった。

愛馬が慰めるようにハルの兜に額を押し付ける。それを受け止めてから故郷を思い出して唇を噛んだ。そうだ、一刻も早く、剣を見つけて帰らなければ―――

「戻りましょう。アラジンも目を覚ました頃かもしれません」

手綱を引いてハルが洞窟へ戻ると、そこには誰も居なかった。気配どころか、人が居た痕跡すら残っていない。別の洞窟と間違えた筈もなく、ハルは周囲を警戒して探る。入口付近に血痕が落ちているのを見たハルは、勢いよく洞窟の外へと出た。