星と夢はどちらが重いか


警吏から逃げながら、アリババ達は迷宮へと向かっていた。ウーゴの肩に乗った三人は後ろを振り返り、チーシャンの町を見下ろす。

「ハルさん、昨日のうちにウーゴくんと仲良くなれて良かったね」
「ええ、でなければ逃げられませんでした」

夜の店から帰ってきた二人(アリババはかなり疲弊していたがハルは触れなかった)を出迎えたハルは、丁度鎧を脱いでいたところだった。アラジンはそこで初めてハルの性別を知り、本能のままに抱きつこうとしたところをアリババが止める。散々堪能したのだから良いだろうと言いたげにアリババは恐ろしい表情を見せた。

その後アラジンの勧めで、アラジンの友人だというウーゴと初めての顔合わせ(ウーゴは顔が無いが)をしたハルは、彼が女性慣れしていないと知ると自分の耐性をつけてもらうために行動を起こした。

「!?……!!??」
「動かないでください」

腕や肩、腹にぺたぺたと触れるハルの行動にひたすら翻弄されるウーゴの姿を見て、アリババとアラジンは「良いなあ」と羨ましそうに指を咥える。ウーゴに顔があったなら「アラジン助けて」と言っていただろうが、生憎彼に顔はないので体中を赤く染めて悶えることしかできない。

しばらくすれば耐性がついたようで、ウーゴはかなり脱力した状態で笛の中へと戻っていった。性欲の権化のようなアラジンをハルの隣で寝させるのは断固として許さなかったアリババだが、自分が横で眠っていても全く狼狽えずに秒で眠ったハルを見て複雑な心境に陥る。

―――俺、全く意識されてねえのな。

昨夜のことを思い出してスン、となっていたアリババは、迷宮が鼻の先まで迫ったことで気持ちを切り替えた。

「死の穴」と恐れられているこの迷宮に、これから自分が挑もうとしているのだ。強い味方が居るとはいえ、恐怖が無いわけじゃない。額にいやな汗が流れ、きらきらと光る迷宮の入口へ近付く足取りは重い。

「どれ、ちょっと様子を見」

そおっと伸ばしていた指の先に全神経を集中させていたアリババは、後ろから突進してくるアラジンに気付くことが出来なかった。ハルは入口に消えていった二人のことを確認してから暫くその場で立ち止まる。警吏が駆けつける前に愛馬が戻ってきたことを確認し、手綱を握ると共に迷宮の入口へと進んでいった。