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ウータンを離れて次の町へと訪れていたハルは、ここでも剣の情報を得るために聞き込みをしていた。しかし得られるものはなく、次の目的地を決める為に地図を取り出す。ひとり地図とにらめっこをしていたハルは、前方から声をかけられて顔を上げた。

「兄ちゃん、随分高そうな剣を持ってるなァ」
「命が惜しけりゃ置いてきな、怪我したくねェだろう?」

人相の悪い男が二人、ハルを見下ろすように道を塞いでいた。その後ろには遠巻きにこちらを見ている数名の男達。おそらく仲間だろうと判断したハルは、手に持っていた地図を馬の背の装具入れに仕舞う。そうして馬の額を撫でて「しばらく離れていてください」と声をかけた。

「馬に人間の言葉なんざ」

馬鹿にしたように嘲笑った男は、足早に去っていく馬を驚いたように見つめていた。それもただの偶然だと判断して腰の短剣に手を伸ばす。

「命が惜しいのならば、剣は抜かないことだ」
「あァ?」

ハルの言葉を挑発と受け取った男達が、怒りをあらわにして短剣を抜く。それを確認したハルは腰の剣に手を伸ばし、向かってくる男達を目前に姿勢を低く構えた。一対多数、誰が見ても勝機など無い。

建物の影から恐る恐る見ていた少年は、これからの惨劇を想像して顔を青ざめた。大人しく剣を渡しておけばいいものを、煽ってまで守る価値がある剣なのだろうか。耳に届く男の呻き声と悲鳴がひとりだけではないことに気付いた少年が、恐る恐る顔を覗かせる。

そこに立っていたのは襲われたひとりの騎士だけだった。剣についた血を払う仕草を見せて仕舞うと、足元で倒れている男達に見向きもせずにその場を去っていく。遠くで見ていたように戻ってきた馬の手綱を握り、その騎士は大通りへと入っていった。

呆気にとられ口を開けて固まっていた少年は「なっ」と声を零す。まさか殺してしまったのだろうか、いや、あいつらの振る舞いは問題視されていたし、居なくなった方がみんな喜ぶだろう。俺だってあいつらが居なくなった方が、怯えて街に近付かなくなっていた人が戻って仕事が増える。でもあんなふうにあっさりと倒してしまうなんて、アイツ、何者なんだ?

「アリババ! そこで何してる。仕事しろ」
「うわっ! ああ、はい! ただいま!」

先輩に咎められてその場を離れる。持ち場に戻る前に先ほどの騎士とすれ違ったが、アリババは顔を上げられずにいた。もしかしたらこいつはとんでもない悪人なんじゃないか。汗を垂らしているアリババを、先輩は訝しげに見ている。そんなアリババの不安は仕事に追われたことで頭から忘れ去られた。それから数刻後、件の騎士が客としてやってくることを、アリババは予想すらしていない。