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答えないアラジンに痺れを切らしたジュダルが自力で王候補を探そうと動き出す。ジュダルの視界では人体が透け、体内の魔力量を映し出している。―――桁外れの魔力を持つシンドバッド。しかし、七つの金属器は所持していないようだ。平凡な魔力を持つ有象無象の中、腕を掴んで自分の邪魔をした騎士の存在に、ジュダルは一瞬だけ目を見張る。
―――なんだ、コイツ。
魔力量はいたって平均。だというのに、強烈な違和感が消えない。煌が所有する迷宮怪物兵士とも異なる妙な気配がする。シンドバッドの部下か……?
先ほどアラジンに抱いた違和感とは別の感情がジュダルの胸中に沸く。興味が無いわけではなかったが、ジュダルは金属器使いの発見を優先しようと騎士から視線を逸らした。
その後ろ、アラジンを支えるようにして座り込む男の腰に、金属器を示す八芒星を見つける。
「みぃ〜つけ〜……たっ!」
指を差されたアリババがジュダルを見返す。その顔を見て、ジュダルはようやく王宮で顔を合わせたことを思い出したようだった。
「お前、アレだろ……昼間、アブマドの豚にいじめられてた奴だろ!」
「!」
「あん時のお前……みっともなかったよね〜! なんか必死こいてわめいてたけど、全然聞いてもらえなくて……しまいにゃウジ虫よばわりされて泣いてたよな〜!」
口元を抑えて嘲笑するジュダルの言葉に、アリババは拳を握る。
「ほんっとお前って、情けない奴……」
アリババが何年も昔から、何度も繰り返し自分に言ってきた言葉を、改めて他者から突きつけられる。
「情けなくなんかない!!!」
空気を裂くようなアラジンの叫びが、ジュダルの笑い声を途切らせた。
「アリババくんは情けなくなんかない! 僕は知っている!! アリババくんは自分が認められないかもって最初から知ってたよ。でもみんなのために、怖いのをがまんして、今まで誰もできなかったことをやりに行ったんだ。勇気ある人なんだ!!」
「……」
「彼は決して情けなくなんかない!!」
眉をつり上げ、まっすぐな眼差しでジュダルを射抜くアラジンの姿に、アリババが名を呼ぶ。ジュダルは「へえ」と楽しげな声を漏らすと手にしていた杖を揺らした。
「そんなに見込んでる王候補なのかよ、こいつが?」
ジュダルの視線の先には自信なさげにこちらを睨むアリババが居る。警戒心を抱いていても腰の剣を抜く気配すら無い。勘付かれないようルフに命令を与え、杖を握り込む。
自然と口角が上がるその姿を、騎士の瞳が捉えていた。
「俺にはそうは……見えねーけど……なっ!!」
向けられた杖がアリババの腹部へと突き刺さる直前、剣先によって弾かれる。その勢いのまま二歩後ろへ下がったジュダルへ、ハルが追撃のために剣を払った。
「あっぶねっ!」
重力を感じさせない動きで距離を取ったジュダルに、ハルは剣を構える。明らかな臨戦態勢にジュダルが意地の悪い笑みを浮かべた。兜の隙間から見える青磁色を睨みつけ、再び杖を構える。
「金属器使いでもねぇのに、邪魔すんじゃねぇよ」
「……」
「バカ殿の新しい部下か? そこそこ、できる……やつ……」
突然表情を消したジュダルの異変に気付いたシンドバッドが名を呼ぶ。ジュダルはぶつぶつと「いや」「気のせいか」などと口にしている。シンドバッドの言葉は届いていないようだった。
「ハルさん?」
ジュダルが現れてから一言も口を開かないハルを心配し、アラジンが背に呼びかける。その名に反応したのは本人ではなく、杖を構え今にも攻撃を繰り出そうとしていたジュダルだった。
「―――ハル?」
呆気に取られたように杖を下ろしたジュダルに、シンドバッドらが目を見張る。
先ほどまでの敵意はどこへ消えたのか。
ジュダルは赤い瞳を丸め、騎士を見つめていた。