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ハルの登場後、ただの一度も笑みを浮かべ無かったジュダルが、アラジンの姿を見て笑った。アラジンが来ることを待っていたと言うその体には、ハルの剣によって刻まれた傷がつけられている。頬を流れる血を乱暴に拭い、アラジンへ攻撃をしかける。

防壁によってそれを防いだアラジンが、背後を振り返って傷だらけの全員へと視線を巡らせる。声をかけられたシンドバッドは、アラジンにも「ジン」を出して戦うように言った。その言葉にアラジンは首にかけた金属器の笛を強く握り込む。

「ウーゴくんはね、もう、いないんだ」

口の端を強く結んだような表情に、全員が言葉を呑む。感情を押し殺しているのか、アラジンの表情に変化はなかった。

ウーゴは消えてしまった。
それでも、すべてが消えたわけではない。
両腕を広げたアラジンの周囲にルフが集っていく。みるみる形を成していった光の固まりは、白い巨人へと姿を変えた。魔人に匹敵する大きさのそれを見て、ジュダルは訝しげに口を開く。巨人の形をしてはいるが、それは熱魔法によって作り出されたものだった。

アラジンは魔法を知らないわけではなかった。
ウーゴが魔法を使うとき、笛を通してアラジンにも練習をさせていた。
いつか、アラジンが魔法を使えるように。

―――アラジンが、一人になってもいいように。

杖を掲げたアラジンが、ジュダルと魔人に向けて熱魔法を放つ。ウーゴが使っていた魔法。自分に教えてくれた戦い方で、アラジンは立ち向かう。

灼熱の双掌ハルハール・インフィガール!!」

熱の余波によってシンドバッドを拘束していた氷が溶けていく。アラジンはモルジアナに、シンドバッドを街まで連れて行くように頼んだ。そこに、シンドバッドを待っている人がいるから、と。迷いですぐに返事が出来ないモルジアナの背を押すようにアラジンは強い眼差しで言った。

「大丈夫だから! さあ早く!」


熱魔法によって壁に打ち付けられたジュダルだったが、防壁魔法によってその身は守られていた。ハルによってつけられた傷から血がとめどなく流れているが、興奮からか痛みを感じているようには見えない。そんなジュダルを見て、アラジンは小さく頷いてから口を開いた。

「僕じゃあ……勝てないな」
「……えっ!?」
「ハルさん、手を貸してくれる?」
「―――勿論」

驚くアリババにアラジンは続けた。自分の魔法は未完成で、ジュダルには到底勝てないことを。ジュダルと魔人を倒すためには、アリババの力が必要だと。

「そ……そうしてーけどよ……!」

アモンの剣は折れた。魔力も残っていない。
ろくに戦える状態ではないと言うアリババに、アラジンは言った。そんなことはない。

ルフの光に包まれたアラジンが、アリババの肩へと手を置く。アリババの頭の中に流れ込んできたのはバルバッドの街の様子だった。王族貴族を皆殺しにしろと叫ぶ男の頭部を、誰かが鍋で殴りつける。痛みで崩れ落ちる男に、鍋を手にした青年が叫んだ。「バカヤロウ、そんなことしてなんになるってんだ!!」生まれたばかりの赤ん坊を抱えた母親が涙を堪えながら叫ぶ。「せっかくすべてが生まれ変わるところだったのよ!」街の暴動を押さえ込む兵士が叫ぶ。「自分の国を自分たちで、やり直すって決めたじゃないか!!」衛兵に指示を出すサブマドが叫ぶ。「あの時、そう誓ったはずだ!」

「アリババくん、この国には希望の力が残っている。前に進み、運命を乗り越えようとする正しい力さ」

アリババの瞳に涙が浮かぶ。

「君が火をつけたんだろ? みんなの希望の心に」

諦めてたまるか、負けてたまるか。
バルバッドの民の想いがアリババの胸に届いてくる。

―――前へと生きる生命を、ルフ鳥は導く。
―――生命の鳥は、いつだって、そんな僕らに力を貸してくれるんだ。

「だから僕らはまだ、戦える!!」