孤爪くんが髪を染めた
二年生に進級して少し経った頃、孤爪くんが髪を金髪に染めてきた。当の本人はいつもみたいに涼しげな表情をしていて、驚いて言葉を無くしているこっちがおかしいみたい。なにかあったの? とは聞けなくて、たくさん悩んだ挙句に「よく似合ってるね」と口にすると、孤爪くんは初めて表情を変えた。「ありがと」少し俯いてしまって垂れた髪が孤爪くんの顔を隠した。始業のチャイムが鳴って、慌てて自席へと戻る。孤爪くんは自分の席にそそくさと座って、スマホを弄っていた。出席番号順に並んだ席は、孤爪くんとは少し離れているけれど、授業中に誰にも気付かれずに彼を見ていられるから結構気に入っている。古典の時間、おじいちゃん先生の眠気を誘う声に抗いながら、斜め前の孤爪くんを盗み見た。金色の髪が光に反射してきらきらと輝いていて、すごく綺麗だった。目を引くその光景をじっと見ていた私はノートを取るのを忘れていて、休み時間に日直の子が消してしまう前に慌ててペンを走らせたのだった。