卒業後
大学生活が始まって早数ヶ月。大学終わりに待ち合わせをして喫茶店に立ち寄る。あまり見慣れない私服のこいつはとんでもなく可愛いし、別の大学であることが本当に不安で仕方ない。登校日は毎日迎えに行って「この子、彼氏います。俺です」ってアピールしたくてたまらない。そんなことやったら呆れられるだろうから言わないが。
「そういや、髪、染めないんだな」
「んー、うん、染めない」
脳内での葛藤を抑えて、コーヒーを飲んでいる苗字に声をかける。受験で染められた黒髪は、数ヶ月経った今も黒いままだ。
苗字は頬をちょっとだけ染めて(可愛い)髪をひと房、指に巻きつけてから口を開く。頑なに視線を合わせないのはなんでだ。
「黒尾とお揃いだから」
「……」
「……やっぱ無し。忘れて」
顔を赤く染め、誤魔化すようにストローを咥える苗字をじっと見つめる。多分今の俺、瞳孔開いてる気がする。
「苗字」
「……なに」
「明日から、『彼氏います』って書かれたプラカード持って生活してくれ」
「……え?」
「後生だから」