ウブな関係




夏の終わりから付き合い始めたけど、忙しすぎていつもごはん食べて解散…みたいな清いお付き合いのま冬になってしまったふたり
初めての誕生日なのに忙しいから、当日どころか数週間前から会えてない

仕事で一緒になった七海から「どうですか、五条さんとは」って訊かれるからなまえさんびっくり

「全然会えないね、忙しくて」
「そうですか」
「てか建ちゃんがそんなこと聞いてくるのびっくりした」
「いやうるさいもんで」
「ん?」
「こっちの話」
「そっか、嬉しいよ。仕事で忙しいからあんま会えないし、基本ごはん食べて解散だけど、それでも会ってくれるし。なんで私なんかと付き合ってくれてるか分かんないけど」
「…」
「ちょうどいいのかな。一応は付き合ってるし、『恋人』って盾はあるから色々断りやすいもんね。ワガママ言って捨てられないようにしないと」
「…」

えへへ、って笑ってるなまえさんにこっそりため息を吐く七海

「あ、建ちゃんコーヒー飲む?」って携帯のあるポケットに手を入れたなまえさんの肩に、腕が回されて「飲む〜♡」っておどけた声が耳元に掛かった

「飲む飲む♡僕あまーいカフェラテがいい♡」
「ひえ、五条さん、」
「知らなかったよ、七海のこと建ちゃんなんて呼んでたんだね。いつから?」
「あの、」
「建ちゃーん、なまえ帰るね。あと建ちゃんて呼ばれてるからって調子乗らないでよね😤」
「乗ってません」
「僕もさとくん♡って呼んでもらうんだから😠」
「どうぞ、張り合ってこないでください」

ふーんだ!って七海に言ったあと、なまえさんの耳元で「帰るけどいいよね?」って低く囁くから腰抜けそう

タクシーの中では無言、でもずっと手は握ったまま
車を降りてからも、建物の大きさやオートロック、エレベーターの設備になまえさんがビビってる間も手は離さない
玄関のドアを開けて中に入った瞬間、ドアが閉まる前にぎゅっと抱きしめられる
抱きしめられたのなんて、もうしばらく前で。
香る体温も触れる温度も久々すぎて緊張してしまう。
驚いて声も出せないでいると、「僕のことすきじゃない?」って弱い声でサトルクンがこぼした

「えっ、」
「僕に都合よく使われてると思ってた?」
「そん、な、」
「不安だった?」
「ふあん、」
「平気だった?なんとも思わなかった?僕のことすきじゃない?」

縋るように抱きしめられて、身長差で爪先が浮く

「五条さんのことはすきだよ、すきだから、都合のいい関係でもちょっとでも長く続けたいなって、」
「ごめんね、そんなこと思わせてたなんて」
「五条さんは悪くないよ、付き合ってくれてるのに、」
「ねえそれやめてよ、すき同士で付き合ってるんじゃないの?対等でしょ」
「…うん」
「全然ワガママも言わないし」
「それは…」
「七海にはいっつもああいう話してるわけ?」
「建ちゃんとは、」
「てか建ちゃんてなんだよ。僕のことは五条さんなのに」
「…建ちゃんはずっと建ちゃんだから」
「…くそ、嫉妬で気狂いそう」

子どもみたいに拗ねてかわいい…いい匂いする…身体でかいし力強い…男…すき…😭ってどきどきして泣きそうななまえさん

サトルクンが腕の力を緩めると、爪先が浮いていたせいで少しよろける
それを支えるように抱き寄せると至近距離で目が合って、恥ずかしいくらい甘い空気になった
確かめるように顔を寄せるサトルクンに、なまえさんが目をそらす

「…嫌なら言ってよ」
「…うん、」

ゆっくりゆっくり顔を近付けて、そっと唇を重ねる
緊張しすぎてお互いの唇が震えていた
初めてのキスで泣きそうになってるなまえさんに理性がブチ切れそうなサトルクン

「なまえのこと大事にしてるし、嫌がることは絶対したくない、」
「…そういうこと、しない?」
「…」
「……正直、五条さん私とできるのかなって、」
「は?」
「いや、私で興奮するのかなって、」
「めちゃくちゃしてるけど。なに?なまえ相手に興奮しないと思ってたの?」
「…ごめんなさい」
「…参ったな。正直そこまで伝わってないと思ってなかった」

なまえさんを担ぐと靴を脱ぎ捨てて部屋に上がる
慌てて背中にしがみついたなまえさんの足から靴が落ちたけど、ひっくり返ってる靴にサトルクンは振り向きもしない

広い部屋のソファに降ろすと、「すぐ戻るから、ここにいてね」となまえさんを覗き込む

「五条さんどこに、」
「コンビニ。ゴム買ってくる」

呆然としてる間にいなくなって、今あった出来事にぼんやりしてるうちにサトルクンが帰ってきて、小さい袋をテーブルに置いた
中はゴム2箱、男らしすぎる買い物

「お風呂は?先入る?」
「えっ、と…」
「僕は一緒でもいいよ」
「…お先に」
「うん、ゆっくりしといで」

コンビニに行く前に入れたのかお湯が張られていて、綺麗なお風呂で落ち着かなく脚を伸ばす

きちんとあったまって上がると、新品の下着(男物)と見るからに大きい着替えとタオルが置かれていた
スキンケアとかドライヤーとか置いてあるもの使って、と入れ替わりでお風呂場に消えたサトルクンの背を見送る

値段で諦めるようなブランドのスキンケアはほとんど中身が減っていない

もしかしたら元カノのやつかな。
五条さんと付き合うんだもんな…こんなラインで揃えてられるひとじゃないとだめか…
というか、すっぴんてヤバいでは?
下着も五条さんのだし、上はないからノーブラだし…
なんか色々まずい…

ひとりになって一気に不安になった

買ってこないと、って財布を持って髪も濡れたまま外に出ようとすると、お風呂から出たサトルクンが目を丸くする

「どこ行くの?」
「…あの、」
「…やっぱ嫌?」
「違う、」

事情を説明すると、ずるずる座り込んでため息を吐くサトルクン

「どうでもいいよそんなの、」
「…どうでもいいって……私、色気ないしかわいくないし、綺麗でもないし、五条さんに釣り合わないなりに、頑張らないとって、思って、」

どんどん小さくなるなまえさんの声にサトルクンが慌てて顔を上げる

「いや、違くて、そうじゃなくて、」
「じゃあなんですか、」
「なまえのことすきだからなんでもいいんだよ。じゃなきゃこんなみっともなく縋ってない、」
「…」
「あとなまえ普通に超かわいいから。すっぴんで僕の部屋着なの最高。ヤバい、すき」
「……おじさんみたい」
「ンマッッ😠もーこの子は😑」

サトルクンはわざとふざけたなまえさんに乗っかるけど、すぐなまえさんを恭しく抱き寄せる
でもほんとだよ、って

そのままベッド行ってラブラブちゅーしていっぱいいちゃいちゃして寝ちゃうかもしれない

次の日の朝に、ゴム使わなかったね…ってなんかちょっと照れながら笑ってごはん食べてほしいな

結局エロいことしても、繋がってしまった事実に感動してふたりで泣きそうになってそうでかわいい

圧迫感がすごくてなまえさんが顔を顰めると、サトルクンが心配そうに覗き込む

「なまえ痛い?」
「んーん、ちょっとくるしいだけ、」
「そっか、」
「大丈夫だから、」
「わかった、」

痛くないならやめないよ、って耳元で囁いた声の甘さに腹の底が痺れて背中が跳ねる
ぎゅっと縋るみたいに締め付けられて、サトルクンも腰が震えた
あーやべえ、って思わずこぼしたような色っぽさにくらくらして堪らなくなるなまえさん、すきすぎて身が持たないから、もうしばらくエッチなことはできないかもってちょっと思った




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