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(「恋、恋、恋」続き)



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マネージャーにならないか。
田中くんに言われたそれを、私は一度断った。反射的に出た言葉が、「ごめん」だったのだ。

だけど断っておきながら、私はバレー部を見学に来ていた。とは言え、人に見つからないように体育館の入り口からそっと覗くだけ。

「シャア!」

田中くんがアタックを決め、叫んだ。見とれた私の方にボールが飛んできていたらしいが、私はそれに気づけなかった。

「危ないっ!」

「え?」

そうして私にボールが当たろうとした瞬間、私をかばってくれた子が居た。日向くんだ。日向くんは慣れた様子でボールを右手で払い落とした。

「大丈夫ですか!? 霜月さんっ!」

「わ、わたし……何でもないっ!」

日向くんが私の名前を大声で呼ぶものだから、体育館にいたバレー部のみんなが一斉に私を見た。もちろん田中くんも。
日向くんに悪気はないのだろうけど、よく通る彼の声が今は少し恨めしい。
私は逃げるように体育館から走り出していた。




霜月がバレー部の見学に来ていたようだ。だけど日向が霜月の名前を呼べば、霜月はなぜだか逃げるようにどこかへ走っていってしまった。やっぱり俺は、嫌われているのだろうか。マネージャーになってと頼んだとき即答で断られたし。

「田中、今の子知り合い?」

「き、潔子さん……あ、あの」

潔子さんは霜月と面識がない。というか、このバレー部のうち霜月のことを知っているのは、影山と日向の朝の秘密特訓に参加した俺と菅原さんと、それから影山と日向だけだ。
どう説明するべきか迷う。本来なら迷う必要はないはずなのに。

「あっ、潔子さんが一人だと大変だと思って……マネージャーに誘った子で」

「……そう。私、少し出てきます」

嘘を言ってしまった。しかも潔子さんに。だけど潔子さんにだけは本当のことを知られたくなかった。なぜかはわからない。

潔子さんは大地さんに断りを入れて体育館から出ていった。あとで聞いた話、潔子さんは霜月を探しに行ったのだそうだ。そして霜月に、「無理にマネージャーやらなくて大丈夫」とフォローを入れてくれたのだと、霜月が話してくれたのだった。


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千明さまリクエストです。
田中くんで「恋、恋、恋」続きです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



170622