君は知らない

君は知らない



私の恋人はとても気さくな人だ。
たまにふざけすぎなところもあるけど、ことバレーをしているときは誰よりも格好よかった。

そんな彼に思いを寄せる子がいる。
梟谷の赤葦くんの彼女ちゃんは、鉄朗に会うたびに積極的に話しかけてくる可愛らしい子だ。

彼女ちゃんには赤葦くんという歴とした彼氏がいるが、私はどうしても彼女ちゃんに鉄朗を盗られそうな気がしてならなかった。



「お疲れさん、ミオ」

「お疲れ、鉄朗」

夏の合宿にて。
やはり私は気が気じゃなくて、嫉妬に押し潰されそうだった。なんて醜いのだろう。

「ミオ?」

「っ、なんでもないっ!」

気づいたら涙が溢れていた。ダメだ、私。

「ミオっ?」

私は醜い感情を隠すために、鉄朗から逃げるように走り出していた。



誰もいない廊下で立ち止まる。
夏の暑さと走ったことにより汗がじとっと滲み出す。気持ち悪い。

「ミオ!」

「な、てつろ、」

私が立ち止まっていたら、私を追ってきた鉄朗が私の手を握っていた。
離してよ。私は、醜い。わたし、わたし……

「ミオ?」

「わた、し。私っ、だって私、赤葦くんの彼女ちゃんと鉄朗が仲良くするの、嫌だよ。でも嫉妬してる自分を鉄朗に知られるの、もっとやだ」

ぼろぼろと涙を溢しながら言えば、鉄朗に抱き締められた。

「なんだ、そんなことかよ……」

鉄朗は安堵の息を漏らす。

「鉄朗?」

「嫌われたかと思ったわ。つーか、むしろミオも嫉妬するんだって、安心したわ」

ああ、なんだ。結局私も彼も、お互いに知らなかっただけなのだ。
君への嫉妬と、私への愛を。


――――――――
優月さまリクエストです。
黒尾くんで切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!



160712