偽りか真実
偽りか真実
大学を出て就職をした。そして、失恋も。
私は幼馴染みの研磨に長いこと片想いをしていた。だけど先日、その片想いにピリオドが打たれた。私にとっては悲しい結果として。
「研磨、お幸せに」
「ありがとう」
研磨は私のひとつ下の幼馴染みと結婚した。
何で私じゃないのだろうか。同じ幼馴染みなのに。
鉄朗と私と研磨とハナ、四人いつも仲良く過ごしてきたはずなのに。
失恋とはなかなか辛いものだと最近知った。
幼馴染みの研磨とハナが結婚した。ハナは俺の片想いの相手だった。
「幸せにな。ハナ」
「うん! ありがとう、クロちゃん」
きれいに笑ったそいつの顔がいまだに脳に焼き付いて離れなかった。
「よう、ミオ」
「ああ、鉄朗か」
仕事帰り、ミオに出くわした。ミオは俺を見るなり肩を落とす。失礼なやつだ。
「あー、お前も失恋したんだっけ」
「まあね。そういう鉄朗も、実はハナが好きだったんでしょ?」
乾いた笑みを浮かべるミオになんだか妙な親近感を覚えた。
「まあね。なあミオ、失恋した者同士、結婚でもするか?」
「はあ? ……まあ、偽りの結婚もいいかもね」
冗談で言った訳じゃない俺の言葉に、ミオも妙な納得の言葉を返す。
こんな流れで結婚するのはどう考えてもおかしいが、そのときの俺たちはなんの疑問もなく、翌日には婚姻届を役所に出しにいっていた。
鉄朗と偽りの結婚をして、一年になる。
偽りの結婚だったから、お互いを干渉することもなく自由にやってきた。
でも最近、私は鉄朗にひかれつつあった。
でも所詮、私は偽りの結婚相手なんだ。この先も愛されることはない。
「ミオ?」
「あ、ああ。ハナ、なんだっけ?」
日曜日の昼下がりの喫茶店。
私は久々に研磨とハナと会っていた。
「ミオとクロ……偽結婚なんかよく続くよね」
「うーん、それなんだけど。最近私、鉄朗と居るのが楽しいんだよね。おかしいよね、偽りの結婚なのに」
私の言葉に研磨とハナは顔を見合わせる。
「ミオ、それちゃんとクロちゃんに言った方がいいよ」
「ハナ……?」
「クロちゃん、大概鈍いから」
ハナの言葉になんだか勇気をもらった気分になった。
「言うだけ言ってみようかな」
そうして私は二人と別れて喫茶店をあとにした。
今日はミオと偽りの結婚をしてからちょうど一年目の記念日だ。
俺は最近、ミオと居るのが楽しかった。好きになっていた。
だけど記念日だから何があるわけでもなく、俺はいつも通りに家に帰る。
「ただいま」
「お、お帰り、鉄朗」
妙にかしこまったミオが俺を出迎えた。
なんだか緊張しているように見える。
「どうかしたか?」
もしかしてミオに好きなやつができたのだろうか。
「わ、私。鉄朗が、好き、になってて……」
「っ、ミオ?」
思いもかけない言葉に、俺は気づいたらミオを抱き締めていた。
「鉄朗?」
「俺も。俺もミオが好きだ。だからこの先も、俺と居てくれ」
一年目のプロポーズに、ミオは涙をにじませながら、大きく頷いた。
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優希さまリクエストです。
黒尾くんで幼馴染みと偽結婚のち両思いです。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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