好きな人
好きなひと
私の好きなひとは面倒見がいい。
普段はふざけているのに、幼馴染みに対してはすごく優しいのだ。
黒尾鉄朗くん。
彼には幼馴染みが二人いる。一人は男の子、もう一人は女の子だ。
その、女の子の方の幼馴染みに、黒尾くんはことさら優しかった。
もしかしたら、黒尾くんは彼女が好きなのかもしれない。
嫉妬と寂しさとそれからよくわからないモヤモヤが、私の胸を締め付けた。
そんなある日、階段の踊り場で幼馴染みの女の子が女子に囲まれているのが見えた。バレー部のファンの子達は、黒尾くんに優しくされるその子が気に入らないようだ。
気付かなければよかった。こんな現場に出くわして、首を突っ込むなんて私はどうかしてる。
「や、やめなよ!」
だってそう、私も一歩間違えたら、この人たちのようになっていたかもしれないって、気づいてしまったから。
「なに、この子の肩持つの?」
「あ、あの……」
でしゃばったはいいが、どうしたらいいのかわからない。怖くて足がすくむ。
「生意気」
「えっ!?」
どん、と突き飛ばされたときにはすでに遅い。
私は階段から落ちてしまい、身体中に痛みが走る。
階段から落ちる直前に、黒尾くんの姿が見えた。
「霜月っ!」
なんとか体をかばったものの、身体中がきりきりと痛み、私は立ち上がれない。
そんな私に黒尾くんは駆け寄って、眉を潜めた。
「なにやってんだよ」
そうしてそのまま私は黒尾くんに横抱きにされ、保健室へ連れていかれた。
バレー部のファンの子達は、いつの間にかいなくなっていた。
身体中にしっぷをはってもらい、大事をとってベッドで休むことになった。
黒尾くんは大きなため息を吐く。
「無茶しすぎだろ」
「……でも私、好きなひとが大事にしてるひとを放っておけなくて」
気づいたら涙がこぼれていた。
怖かった、痛かった。
でも今は、胸の苦しさが勝っていた。
「だって私、あの子達の気持ち、わかるんだもん。一歩間違えたら、私もああなってた」
一度溢れだした涙は止まる様子もなく、ぼたぼたと頬を伝って布団に染みを作る。
「霜月……俺な」
黒尾くんの声色が低くなる。私は黒尾くんをじっとみた。
ふっ、と抱き締められた。
「俺、お前が好きだってようやく気づいたわ」
「黒尾くん……?」
「鈍くて悪いな」
こんなことがあっていいのだろうか。
彼は私を好きだと言ってくれた。
嬉しい、でも信じられない。
体の痛みは相変わらず私から消えてはくれなかったけど、心だけは晴れやかで、私はそっと彼を抱き返した。
――――――――
柚希さまリクエストです。
黒尾くんと黒尾くんの幼馴染みに嫉妬する夢主のお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
170329