なまえ
なまえ
悶々悶々悶々。
俺は柄にもなく機嫌が悪かった。
今朝、恋人のミオが、クラスの男子に告白されているところに鉢合わせた。
相手も相手で、ミオが俺と付き合っているのを知っていての行動だった。
バレー部マネのミオの朝練終わり、つまりは俺の朝練の終わりに待ち伏せていたそいつは、わざわざ俺の前でミオに告白した。
「好きだ、霜月。付き合ってくれ」
「なっ、私、京治くんと……」
突然の告白だから仕方ないと言えばそうだが、ミオは一瞬のためらいを見せた。
頬は赤く染まっていた。
「ねえ、ミオは俺と付き合ってるんだけど?」
だから俺はミオとそいつの間に割って入り、そいつをにらんで語気強くいった。
「知ってる。でも、関係ない」
そいつは、に、と挑発的に笑い、俺たちの前から離れていった。
俺はミオを振り返る。
「ねえ、なに浮かれてるの?」
「京治くん? わた、そんなつもり……」
優しくなんかできなかった。余裕なんかなかった。
「じゃあ、なんですぐ断らなかったの?」
「だって、だって驚くじゃない……てか、なんで怒ってるの?」
ミオも俺の態度に腹をたてたのか、少し声を荒らげた。
「怒ってないよ」
「怒ってるじゃん!?」
そうして俺とミオはこの告白を機に喧嘩をし、意地の張り合いで互いが互いに話しかけることをしなくなった。
それがたった数時間前のこと。なのに、だ。
実際俺はミオと同じクラスだから、気づくとミオを目で追っていた。
いつもは俺が一緒にいるからか、男子なんかから話しかけられない彼女は、今日は特に男子から話しかけられる機会が多いように感じる。
悶々悶々悶々悶々。
俺のミオなのに。話しかけるな。
限界、だった。
昼休み、級友と楽しそうに話すミオの手をおもむろに掴む。
「な、なに?!」
そしてそのままミオの手を引いて教室をあとにした。
「ねえ、ねえってば」
誰もいない教室まで来てミオを振り返る。
いまだ機嫌の悪いミオは、道中も、ねえ、とかなに、しか言っていない。
ねえ、ミオ。なまえで呼んでよ。
ねえ。ミオ。ミオ……!
「え、?」
切なくて苦しくて、気づけば俺はミオを抱き締めていた。
「ミオ……」
「え。え? どうした、京治くん?」
ああ、聞けた。彼女の口から、俺の名前を。
「ん、ごめん、ミオ。意地はってごめん。ね、もう一回、名前呼んで?」
ミオの首筋に顔を埋めて言えば、仕方ないな。
小さく笑ったあと、今度は優しい声色で名前を呼ばれた。
「ん。京治くん。好きだよ、京治くん」
――――――――
こまりさまリクエストです。
赤葦くんで、喧嘩してからの仲直りまでの切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
160302