不意討ち

(「またね」続き)


不意討ち



ある日の朝の部室にて。
木兎さんが珍しく雑誌なんかを読んでいたけど、俺はそんな木兎さんを然して気にもせずに着替えを済ませて体育館に向かおうとした。

「なあ、赤葦」

「……なんです?」

すっかり雑誌に集中していたように見えた木兎さんは、おもむろに俺を見ると、その雑誌を俺の目の前に広げる。
その雑誌は月刊バリボーだった。

「このさ、及川ってセッターとお前、どっちがすげえんだろうな?」

至極真剣に問われたそれより、俺は木兎さんの広げた雑誌に釘付けになる。

"及川"とは、この前ミオをナンパしていた、あの優男だったからだ。

「……知りま、せんよっ!」

だから俺は吐き捨てるように言って、足早に部室をあとにした。


気分が悪い。同じバレー選手でしかもセッターだったのか。

「……けーじ?」

しかも及川という男は、ミオの頭を撫でたりと、ずいぶん馴れ馴れしかった。
いや、むしろあれはミオに好意を寄せていた。

「けーじ? ……けーじ!」

「あ、な。なんだっけ?」

俺はミオの声に我に返った。
今朝、あの雑誌を見てから俺の心は穏やかではない。
昼休みの今、ミオと昼食を共にしても、心ここにあらず、だった。

「ねえ、ミオさ」

「……な、なに?」

俺はなるべく優しくミオにいったつもりなのに、ミオはびくっと肩を震わせた。

「この前、買い物の帰り道にあった男、覚えてる?」

「あ……うん」

ミオは顔を赤らめて答える。
俺のなかのモヤモヤが広がる。

「その人、ミオに何か言ってた?」

「あ、の。ナンパされてたのを、助けて……もらったの……」

切れ切れにいうミオに、確かナンパしていたのは及川という男じゃないかとなんだかイライラした。

「ミオ、あの人にナンパされてたの、自覚ないわけ?」

不機嫌を露に言えば、ミオはあわあわと慌て出す。
慌てるってことは、少しは罪悪感があったわけか。
だったら、ほんと、イライラす「けーじ!!」

思考が停止した。
必死に俺の名を読んだミオは、そのまま俺の唇を塞いだのだ。あの、ミオが、だ。
目の前のミオは、耳まで真っ赤にしながら俺をまっすぐに見ている。

「ミオ、?」

「わた……私が好きなのは、けーじだけ……だよ?」

予想外のミオの不意討ちに、俺のモヤモヤなんて一気に吹き飛んでいて、俺はただただミオの目から逃れられなかった。


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千明さまリクエストです。
赤葦くんで、「またね」続き、木兎くんが見ていた月刊バリボーに及川くんが載っていて、赤葦くんがモヤモヤするお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!


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