who are you?
who are you?
私は自分の容姿が好きではない。昔から私はなぜだか周りから浮いていたし、特に男子からの視線が痛かったからだ。
私の何がいけなかったのだろうか。
外見? 長い黒々とした髪? 性格?
だから私は、高校入学と同時に自分をひた隠しにした。
背中まである長い黒髪はきっちりおさげにし、顔立ちを隠すために黒縁の伊達眼鏡をした。
性格だって、可もなく不可もなく、至って真面目な、どちらかといえば模範生を演じてきた。
ただ、そんな私にはひとつ、隠し事がある。
「お帰りなさいませ、ご主人さま?」
くりん、と小首をかしげ、可愛らしく笑って見せる。
「えへへー、また来たよ!」
対して"ご主人様"は私を見て厭らしく笑う。それでも私は仕事と割りきって接客をする。
そう、私の隠し事とは、このアルバイトにある。
いわゆるメイド喫茶で働く私は、恐らく私を知る誰もが私だと気づくはずがない。
長い髪を下ろし、伊達眼鏡もしていない、しかも少しの化粧をしてしまえば、なかなかどうして、私も化けるものである。
さらにはこの、メイド特有のテンションと物言いが加われば、自分でも驚くほど私は霜月ミオではなくなるのだ。
そうして今日も今日でアルバイトに励んでいた時だった。
「お帰りなさいませ、ご主人さ、!」
固まった。
私は、今しがた出迎えている"ご主人さま"を見て一瞬だけ。ほんの一瞬だけ固まった。
「ご主人さま。こちらへどうぞ♪」
だけど私はどうにか持ち直し、"ご主人さま"を席まで案内した。
無事ご主人さまへの案内を終え、キッチンへ隠れるように入る。
「ミオちゃん、あの人すごいイケメンだね!?」
アルバイト仲間が私に耳打ちをする。
「ミオちゃん、どうかした?」
「な、なんでもないよ……!」
なんでもなくない。
その、イケメンというのは、同じクラスの及川くんだったのだ。
まさか同級生がこんな場所に来るとは予想もしていなかった。
……だ、大丈夫だ。私に気づくはずがない。
私は自分に言い聞かせる。
再びキッチンからフロアを覗く。
うん、きっと彼は、気づいていない。
私は気を取り直して彼への接客へと繰り出すのだった。
なんでこんな場所を訪れたかといえば、ただの興味本意でしかない。
東京で有名なメイド喫茶がここ宮城にもできた。
だから俺は、メイド喫茶特有の雰囲気を味わってみよう、そんな軽い気持ちでそこに入っていった。
「お帰りなさいませ、ご主人さ、」
「っ!?」
だけどなんでかな。
俺はその子に一目惚れしてしまった。
俺を出迎えたメイドちゃん。
長い黒髪の、可愛らしいその子。
メイド特有の口調やテンションで俺に接してきたその子。
でも、俺はこの子と会うのがはじめてじゃない気がした。
「お待たせしましたーご主人さま? 当店特製のオムライスだにゃん?」
「あ、ありがとう」
俺は再び現れたメイドちゃんを凝視する。
彼女は俺を気にする様子もなく、オムライスにケチャップで文字を書いている。
誰だっけ、誰だっけ。
「あっ!」
「!? ご主人さま、どうかしましたか?」
「な、なんでもないよっ?」
誤魔化した。
確かに俺は、この子を知っている。
知っているどころか、毎日会っている。
同じクラスのミオちゃん。彼女に瓜二つじゃないか。
俺はメイドちゃんを再び見る。
「冷める前に召し上がれっ♪」
「いただき、ます」
やっぱり、そっくりだった。
雰囲気こそ違うものの、このメイドちゃんは、ミオちゃんなのではないか。
出かけた言葉を飲み込んで、俺はオムライスへと意識を移した。味なんか、分からなかった。
こんなに学校が憂鬱なことはなかった。
私は先日、アルバイト先で同じクラスの及川くんに出くわしてしまった。
気づかれてないだろうかと、気が気じゃなかった。
そんな風にそわそわとした一日が終わろうとした時だった。
「ミオちゃん、」
「……お、及川くん? なんでしょうか」
私が教科書を急いで鞄に詰めていたら、及川くんに話しかけられた。
しかも及川くんは私をじっと見ている気がする。
「ミオちゃんって、アルバイトとかしてたっけ?」
「っ! まさか。アルバイトする時間があるなら、勉強しますよ」
至って冷静に答えれば、そうだよね、なんて彼が力なく言う。
「気を付けて帰ってね」
「あ、ありがとうございます」
私は立ち上がるとそそくさと教室を後にした。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
まさか、ばれてないよね? ……ばれるはずがない。
私はひとつ深呼吸をし、今日もまた、ご主人さまを笑顔で迎えるのだった。
「お帰りなさいませ、ご主人……」
月曜日は、部活はない。
自分でも何をしてるのかとため息が漏れた。
だけど俺は、あの子が彼女なのではないかと真実をはっきりさせたかった。
学校帰りのミオちゃんの後をそっと尾行した。
ミオちゃんはあの喫茶店に入っていく。
どっど、と俺の心臓が脈を早める。
やっぱりあの子は、ミオちゃんなのか。
いや、だけど、ミオちゃんはただ単にあの喫茶店にお茶を飲みに入っただけかもしれない。
俺は意を決してメイド喫茶へと足を踏み入れた。
「お帰りなさいませ、ご主人……」
ああ、やっぱり君は。
俺を出迎えたメイドちゃん、いや。ミオちゃんは俺を見て言葉をつまらせた。
ねえ。やっと見つけた。俺は君を探していた。
「ただいま。メイドちゃん。ねえ、君は誰?」
君は誰?、なんて、意地悪だったかな。
だって俺は知っている。君はミオちゃんだってことを。
――――――――
千明さまリクエストです。
及川くんで、夢主はおさげに伊達眼鏡で真面目な感じで、実はメイド喫茶で働いていて、そこで及川くんが一目惚れし、クラスメイトの夢主と瓜二つだったので、及川くんが夢主だとつきとめるお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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