本気
本気
「やっほーミオちゃん、」
「あっ、及川くん……」
昼休み、俺はひとつ先輩の三年であるミオちゃんの教室を訪ねた。
ミオちゃんは、俺が一年の時から好きな女の子だ。
ひとつしか違わないのに大人で、だからだろうか、いつからか彼女が特別な存在になっていた。
「ミオちゃん?」
「及川くん……その呼び方、やめてよ……」
ミオちゃんは俺が彼女をちゃん付けして呼ぶのを気にしている。
だけどまあそれは、俺にとってミオちゃんが特別なことを意味するなんて彼女は知らないんだろうな。
「いいじゃん。ミオちゃんは特別だから」
「ちょ、やめてよ……!」
ミオちゃんは周りの目を気にしながら言う。そりゃ確かに有名人の俺と仲良くしていたら目立つわけだけど。
こうでもしなきゃ、ミオちゃんに悪い虫がついてしまう。
「じゃ、また来るね?」
そう言ってミオちゃんの頭をひとなでし、俺は教室をあとにする。
「きゃー及川くん!」
「ああ、ありがとう」
教室を出るなり女子に囲まれる。正直嫌な気はしないけど、そんな俺を見てミオちゃんが複雑そうな顔をするのも知っていた。
そんなある日の帰り道。
俺は時間が合えばひっそりとミオちゃんの帰り道を尾行している。
いや、変な意味じゃなく、護衛的な意味で、だ。
「や、え?」
「ねー君、俺らに付き合ってよ?」
俺が考え事をしてたら、ミオちゃんが不良に絡まれる。
「ミオちゃんっ!」
反射的にミオちゃんをかばうように不良との間に割って入った。
「なんだ?」
ぎ、と睨む不良に俺もにらみ返す。
だけどなかなか、喧嘩になれば、俺が手を出せないのは明らかだった。
問題を起こせば、部活の試合に出られない。
だから俺は不良たちにされるがままに殴られた。殴られてもなお抵抗しない俺に飽きたのか、不良たちはやがて俺たちの前から姿を消した。
傷ついたぼろぼろの体をミオちゃんが心配して屈む。
「及川くん……けが……」
「ん、大丈夫だよ。ねえ、ミオちゃん。他の人には黙ってて?」
にこっと笑っていったのに、ミオちゃんの目から涙が溢れていた。
ああ、泣かすだなんて最低だ。
「泣かないで、ミオちゃん」
「でもっ。何で私なんかをかばったの?」
ああ、まだわからないのか。
俺はそっと手を伸ばしミオちゃんを抱き寄せた。
「俺、ミオちゃんが好きだから。じゃなきゃこんなことしない。本気なんだよ?」
至極真面目に言えば、ありがとう。彼女が俺を抱き返してきた。
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千明さまリクエストです。
及川くんで、切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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