ショートケーキ
ショートケーキ
最近日向が僕のところに勉強を教わりに来る。夏の東京遠征に行くには、テストの補習を避けなければいけないからだ。
まあ、僕に言わせれば、今さらあがいたって無駄だと思うんだけど。
「ねえ日向、食べながら勉強しないでくれる?」
「ふぁ!?」
そんなある日、日向はなぜだかケーキを片手に勉強をしていた。食べるのか勉強するのか、どっちかにしてよ。
ていうか、僕に失礼でしょ。
「あっ、月島はケーキ好きか? 食べる?」
「なんでそうなるの……もういい。今日は終りね」
イライラしたから、僕はヘッドフォンを耳に宛てて日向を無視した。
今日も平穏な授業が終わる。僕は部活に向かうべく体育館へと歩き出す。
そんな道すがら。
「あっ、月島くん、よかったらこれ、食べて?」
「? 君、だれ?」
廊下でばったり会ったその子は、僕にケーキを渡してきた。見覚えがあるそのケーキ。小さなイチゴが乗った、ショートケーキ。
ああ、そうだ。日向が食べていた、あれだ。
「あ、月島くん、ケーキは嫌いだった?」
にこ、となつっこい笑みを向けた彼女に、僕は別に、と返事をする。
「今日のは良くできたからさ! 朝日向くんにもあげたんだけど、それより今回はうまくできたんだよね」
彼女はにしし、と笑う。なんだか調子が狂う。
「ケーキ、よく作るの?」
「え? ああ、私、料理部なんだ。あっ、そろそろ戻らなきゃ。じゃ、またね?」
そうして彼女は僕に手をふると家庭科室へと消えていく。
僕は貰ったケーキを大事に握りながら、彼女の背中をただただ見つめた。
後日、日向が勉強を教わりに来たとき、僕は日向に彼女について訊ねた。
「日向……ねえ、この前食べてたケーキを焼いた子、誰?」
「ん? ああ、霜月さんだよ。同じクラスの霜月さん」
霜月、か。僕はふうん、と返事をして、今日もまた日向に勉強を教えるのだ。
――――――――
千明さまリクエストです。
月島くんと知り合うお話です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
160323