笑ってよ
笑ってよ
弟が、試合に負けた。王様だと揶揄された飛雄は、孤独だった。
青城に入学して三年目、私はバレー部のマネージャーとして充実していた。
「ミオちゃん、お疲れさまっ」
「及川くん。お疲れさま」
私は教室を訪ねてきた同じ部活の主将である及川くんに挨拶を返した。及川くんは私が飛雄の姉だからか、よく私に絡んでくる。
「新入部員、今日からだから。よろしくね?」
及川くんはぶりっこな笑顔で私に言うと教室をあとにした。
新入部員が来るのは知っていたけど、まさか飛雄の同級生、しかも元チームメイトだなんて。
嫌でもあの試合が脳裏に浮かぶ。
「え、ミオちゃん?」
浮かんだら最後、私の目から止めどなく涙がこぼれた。ダメだ、私。
「ごめん、ちょっと体調悪いから、今日は帰るね」
私は嘘を言ってその日は部活を早退した。
ミオちゃんにとって、国見ちゃんや金田一はトラウマなのだろう。
一年が入ってからミオちゃんは部活を早退することが多くなった。泣いてしまうのだ、一年を見て。
確かに自分の弟があんな風な目に逢えば、仕方ないのかもしれない。
てか、俺、なんでミオちゃんのことで悩んでるんだろう。
ミオちゃんは飛雄ちゃんの姉だから、だから気になるんだと思っていた。
「ミオちゃん?」
ある日の廊下、ミオちゃんに出くわした。手にはなにか紙を持っていた。
「及川くん、私、部活やめる」
力なく笑ったミオちゃん。手に持っていたのは、退部届けか。
「えっ、及川くん?」
気づいたらミオちゃんの手をつかんで歩き出していた。ねえ、ミオちゃん。そんなの、やだよ。
誰もいない教室まできて、ミオちゃんを振り返る。
「俺、ミオちゃんが好きだよ。部活は俺がフォローする。だからやめるなんて言わないでよ」
ああ、君が好きなんだって、今さら気づいたから。
だからねえ、笑ってよ。ミオちゃん。
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千明さまリクエストです。
及川くんで切甘です。
期待に添えたかわかりませんが、精一杯書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!
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